それでも僕の言葉できみのことが好きだと伝えたかったから

渡逢 遥

いつかきみの頭のなかから僕という歴史が消滅して生きる屍になったとしても、骨の浮き上がった身体できみに愛を伝えに行きたい。愛なんて幻想で身勝手で滑稽だと過去の自意識に馬鹿にされたって、僕にはもうきっと脳はないから下書きなしできみに愛を伝えに行きたい。告白という字は白を告げると書く。頭真っ白にしてきみに愛を伝えに行きたい。独白はしたくない。ところできみは今なにをしていますか。どこにいますか。そんなこと正直どうでもいい。手首傷だらけにして毎日泣いていても、風俗に堕ちていても、いや、堕ちるは失礼かごめん、風俗やキャバクラで働いていても、ヤク漬けになって四六時中ラリっていても、風呂にも入れないくらい憔悴し切って布団のなかに籠っていても、そしていまマンションの屋上から飛び降りようとしていても、僕はきみを愛してる。でもそれだけじゃだめなんだ。だってきみはもう僕を覚えてないから。だからもう一度覚えてもらうためにきみを見つけに行かなきゃいけない。そしたらほら、やっぱりきみはそこにいるじゃん。きみにはもう見えないだろうけど、下で先に待ってるからさ、あとで返事聞かせてくれよ。じゃあ、また初対面になろうね。愛してる。

それでも僕の言葉できみのことが好きだと伝えたかったから

それでも僕の言葉できみのことが好きだと伝えたかったから

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-02-13

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