三択問題

渡逢 遥

改札の向こう側

ちいさくなるきみ

どんな表情をしているのか

わからなくなるきみ

きょうの口のうごきは

A、A、E? A、O、A、A(A、I、A、I)?

初動は全部おんなじだから

決まり字は二文字目

はじまるスローモーションに じっと目を凝らす

「A」

......

「I」

(...I。たしかにI。やっぱりI。そっか。Iか。)

......

「A」

(A。確信した。つぎはIだろう。もう、いっしょにはいられないという最初で最後の合図だろう。そうだ。そうなはずだ。きっとそうにちがいない。いや、そうでなければならない。無様だ。わたしはいつも、無様だ。)

......

......

「O」

(O?オー?あくび?くしゃみの前触れ?わたしの見間違い?わたしの決まり字にそんな母音はなかったはずだ。なに。なにが起きてるの。怖い。なに?)

......

「U」

......

......

......

(終わったみたいだ。)

............

(またどの選択肢にもない母音がでてきた。U?ユー?ゆー?You?もうわけがわからない。五文字の選択肢なんてわたし用意してない。いま見ていたこのスローモーションは、夢だったのか。いや、夢じゃない。こんどは両手を横に大きく上下させているきみがたしかにわたしの瞳に映っている。)

もうわかんない

きみのスローモーションを複製する

「A、I、A、O、U」

両手をとめて目を細めながら両口角がゆっくりとあげるきみが見えた

そういう表情にさせるスペリング

そういう表情にさせる呪文

ああ やっとわかったよ

すごくずるい、ね

きみも わたしも

これ以上おたがいがちいさくなるのは

もう見ていられないよ

三択問題

三択問題

  • 自由詩
  • 掌編
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