はじまりの場所【掛け合い】

那智琉

ここから始まり、またここから。

⚪この駅、懐かしいわね

⚫ん?そうだな。始まりはここからだもんな。

⚪うふふ



(⚫のモノローグ)
通勤で毎日のように通る駅。
そこに、毎朝出会う女(ひと)がいた。
俺が定時で上がれる日は帰りも一緒になることがあった。
一目惚れしたわけじゃない。
でも、なんとなく、いつの間にか目で追い、
毎朝姿を探すようになった。
小説やドラマみたいに何か始まるわけもなく、ただ単調な毎日が続いていた。
そんなある日、前を歩く彼女のカバンから
何か落ちたのに気づいた。
『オイオイ、ドラマかよ(笑)』って内心笑いながら俺はそれを拾った。

⚫あのっ、これ、落としましたよ!

⚪えっ、あ、すみません。ありがとうございます。

⚫いえ、…それじゃあ

⚪あのっ(被せるように)…いつもここで会いますよね。

⚫えっ…はい、そうですね。

⚪いや、あの、いつも会うから、つい、目で追っちゃって

⚫あ、俺もっ!…俺も…気になってたというか…

⚪あはは、私たち、何言ってんだろ(笑)

⚫プッ、ほんとに(笑)

⚪じゃあ、また、ありがとうございました



(⚫のモノローグ)
あれから、2年。
俺達は毎日顔を合わせ、言葉を交わすうち、
自然と付き合うようになった。
今は、半同棲みたいな生活を送っている。
そして、今日は一大決心の日…。

⚪ねぇ、なんでわざわざここで待ち合わせたの?

⚫言ったろ、ここが始まりの場所だからって。

⚪え?

⚫これ…開けてみて。

⚪これ…指輪…

⚫プロポーズ!すんなら絶対ここだなって。
『俺と結婚してください』

⚪(涙ぐみながら)…はい!

⚫はー…緊張した(笑)

⚪緊張…したのは2年前の私よ。
あの時、あなたの前に落とすの大変だったんだから!(笑)

⚫あれ!わざとだったのか?(笑)

⚪そうよ(笑)わざとじゃなきゃドラマじゃないんだからあるわけないじゃない。
あなたとのきっかけが欲しくて必死だったんだから!…って言っちゃった(笑)

⚫俺あんとき『ドラマかよ(笑)』って思ったもんな(๑´ㅂ`๑)笑笑

⚪私の方が先に好きだったんだからね

⚫いーや!俺が先だね

⚪あはは、私たち、何言ってんだろ(笑)

⚫プッ、ほんとに(笑)変わらねぇな、俺達

⚪⚫(一緒に笑いながらフェードアウト)

はじまりの場所【掛け合い】

はじまりの場所【掛け合い】

  • 小説
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  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-02-12

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