十年愛 【掛け合い】

那智琉

【配役】
「貴秋」・・・岡山在住。2年前に妻と離婚。仕事に没頭する日々。
『深雪』・・・3年前に夫と死別。現在は猫と東京で二人暮らし。

十年の長い年月を経て、ふたりは。

(貴秋のモノローグ)
東京。
会議があるため俺は岡山から出張で来ていた。
長ったらしい午後の会議から解放され、
風に当たるために近くに見つけた公園に避難する。
木陰のベンチを探す。
ようやく見つけたその場所には、すでに先客が居た。
諦めて他のベンチを探そうとすると、その先客が立ち上がった。

『ひょっとして…やっぱりそうだわ。久しぶりね』

「え?深雪?どうしてここに?」

『私のウチ、この近くなの』

「東京に…住んでたのか…」

『あなたは?どうして東京に?』

「俺は仕事で、まぁ出張だな」

『そうなのね。こんな偶然、嘘みたい…何年ぶりになるかしら…』

「…10年…だよ」

『10年か、もうそんなになるのね。歳を取るのは早いわ(笑)』

「歳なんて、深雪は全然…変わらないよ」

『…間が空いたわよ(笑)』

「いや、そうじゃなくて!…思い出してたんだ、あの頃の深雪を」

『…若かったわね、私たち。
若かったからこそ、誤解も間違いもあったけどね(笑)』

「誤解や間違い…ね。俺は…ずっと後悔してたよ。」

『なにを?』

「あの時、深雪の手を離してしまったことを」

『…あの後、私は逃げるように結婚して東京に来たの。向こうに居るのが…辛かったから』

「そうだよなwww幸せだもんな」

『そうね…幸せ…だったわ』

「だった?今は…違うのか?」

『…あなたは?結婚したって聞いたけど?』

「俺は…別れたんだよ、続かなくてな、2年になるかな(笑)」

『そうだったの…』

「今はひとりで気楽なもんさ」

『私も同じようなもんね(笑)
…亡くなったの。3年前に。今は猫と二人暮らし(笑)』

「え…」

『バチが当たったのよ。神様は…ちゃんと分かってたんだわ、だから私に』

「何を」(深雪の語尾を遮るように)

『え?』

「何を分かってたんだ?」

『…私が…あの人を愛してなかったことを』

「それなら俺も罰だな。
嫁さんに言われたよ、あなたは私を愛してないって(笑)」

『…私』

「俺は、あの日からずっと、忘れられなかったんだ。ずっと深雪を…愛してた」

『貴秋…』

「なぁ、俺たち、遠回りしてきたよな。
お互いに違う誰かを傷つけて…でも、こうして目の前に、手を伸ばせば届くんだ。そうだろ?」

『うん…手を、掴んでもいいの?』

「あぁ。もう間違えたりしない。
深雪の、残りの人生を…俺にくれないか」

『うん…うん…』

「やっと…一緒になれる…深雪」

『貴秋…愛してる。もう離さないで…』

(抱きしめて、十年ぶりのキスを)


(深雪のモノローグ)
子供代わりの猫達に囲まれながら、
離れていた十年の愛を取り戻すかのように、穏やかに、愛に満ちた日々をふたりは送った。

(ふたりで)
これは、誰も知らない、ふたりのお話。

十年愛 【掛け合い】

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