雨の朝にきみはきえた
さあさあとふる雨に、きみがきえた朝。きれいだった、あの日の、山からみえた町と、海と、水平線が、ぼくのあたまのなかでぐちゃぐちゃにとけて、まぜこぜになった。山と、森には、いきものたちがみんな、ひっそりといきていて、いきているはずなのに、いきていないみたいで、ちょっとこわい。
恋人の夢は、いつも、スクリーンで映画を観るように、ぼくのなかで投影され、ぼくのすべてを、支配してゆきます。恋人の夢に、ぼくは染まる。ばかみたいにハッピーならば、まだ、ゆるせるけれど、ぼくの恋人のみる夢は、どちらかといえば、世界観の破綻した、負の感情が渦巻く、色で例えるならば、赤と黒のみの、音で例えるならば、皿を、フォークの先端でなぞっただけの、つまりは、不快、それにつきるということ。恋人のことは、あいしているけれど、あいしているぶんだけ、狂ってゆく気がします。
きみがきえた朝に、ぼくもいっしょにきえたかった。
雨にぬれて、洗い流されたかったよ、なにもかも。
雨の朝にきみはきえた