君ともう一度

紅葉ひまり

  1. 序章
  2. 本論
  3. 終章

序章

ある夢を見ていた

それは丘の上にある広い草原で僕が誰かも分からない女の子と話している夢


こういった夢を見るのは初めてではない

だが僕はきまってこの女の子の事を思い出せずにいる

顔も…名前も…

もはやこの女の子は実在しない空想上の子なんじゃないか…と


今日も夢を見ていた


相変わらず顔も分からない彼女が今日は何か僕に訴えかけていた

だが夢の中で会話することができない僕は彼女が何を訴えかけていたのか分からないでいる

必死に彼女が言っていた言葉を思い出そうとしてみても彼女の声にノイズが混じってしまい聞き取ることが出来ない

あの夢で彼女は僕に何を伝えたかったのか…僕は知る術もないだろう…


何度も見る夢に気になった僕はあの広い草原に行ってみることにした

僕は生まれてから遠くに引っ越したことがないため一番近い丘の上に行ってみることにした

着いたのは夕方

広い草原の下で僕は立ち尽くしていた

だが思い出すことは何もない

やっぱり僕の空想だったんだと思い帰ろうと振り返った先には女の子が立っていた

足音も気配も感じなかった

いったいいつからいたんだろう
そんな僕の考えを知る由もない彼女はこう言った



「遅いよ」
「私、待ちくたびれちゃった」

     


僕はこの女の子のことを知らない


「君は僕のことを知ってるの?」


「知ってるよ」

「もしかして忘れちゃったの?」

「夢に何度も登場してあげたじゃない」


「君があの女の子…?」
「君は何で毎回僕の夢の中に現れるんだ?」

「そっかぁ、忘れちゃってるんだね」
「じゃあ思い出させてあげるよ」


彼女はそう言って僕にナイフを振りかぶった

一瞬何が起きたのか分からなかった

だが、僕の体から流れ出る真っ赤な血液で僕は刺されたんだと自覚した

本論

pi,pi,pi,pipipipipipipi

アラームの音で目覚めた僕は今見た夢のリアルさに吐き気を覚えてトイレに駆け込む

どうしていきなり刺されたのかは分からない

だが僕はあの光景を前にも見たことがある

直感的にそう思った

僕が前にも刺されたことがあるのかあるいは僕が誰かを刺してしまったのか

どちらかは分からないが僕はこの夢で起きた不可解なことを解明しなければならないと思った

僕の両親は既に他界してしまっている

後僕の周りのことを聞ける人と言ったら幼馴染のリオくらいだろう

僕は久しぶりにリオの家に行くことにした

幸いリオの家までそう遠くはない

僕はすぐに家を出た

歩いて10分程度でリオの家には着いた

チャイムを鳴らすとリオが玄関の戸を開けてくれた

「やっほー、たくみ」
「久しぶりじゃん。どうしたの?」

「久しぶりだね。実は聞きたいことがあって」

「なるほど。とりあえず入んなよ」

「あぁ、お邪魔させていただくよ」

そう言って久しぶりに入ったリオの家は昔と変わっていなかった

「リオの家なんも変わんないな」

「まぁね(笑)」
「お茶でいい?」

「あぁ、ありがとう」

「それで聞きたいことって?」

僕は彼女の特徴を伝えて周りにそんな子がいないか聞いてみた

「黒髪ロングの赤い瞳の女の子ね~」
「私とたくみの周りにはいなかったと思うな~」
「第一赤い瞳の女の子が居たら覚えてるしね」

「やっぱそうだよね。ありがとう」

「その女の子がどうかしたの?」

「最近夢でよく見るんだよね」

「え、ついにたくみにも春が?!」

「そんなんじゃないよ(苦笑)」

「なんだつまんないの」

リオには僕が殺されることを話してないからそう思われるのも仕方ない

僕はそんなことを思いながら苦笑していた

「毎回夢に出てくる女の子かぁ…不思議なこともあるんだね」

「うん、こう毎回も出てくると気になっちゃって…」

「やっぱり気になる女の子つまりたくみにも春が来たって事じゃん!」

「あ、あはは(苦笑)」

僕は自分が刺されたことが気になったのだがそのまま言わないでおくことにした

「毎回見る夢ってどういうのなの?」

気になったのかリオは夢の詳細まで聞いて来た

僕は自分が刺されたことは言わずに丘の上で彼女が現れたこと
最初は顔も名前も分からなかったこと
言葉を発してても聞き取ることが出来なかったことを話した

「でもこの間見た夢は彼女の顔も見れて声も聴くことが出来た。夢の中だけど会話することもできたんだ」

「そうなんだ。聞けば聞くほど謎だねぇ」
「夢の中でどんな会話をしたの?」

「彼女は僕のことを待ってたみたい。後、私のこと忘れちゃったの?って言ってた」
「だから僕は彼女とどこかで会ったことがあると思ったんだけど…」

「なるほどね。だから周りでそういう子がいなかったか聞いたんだ」

「うん」

「じゃあ、その丘行ってみようよ!」

「え、本気で言ってるの?」

僕はあんな夢を見た後だからか乗り気ではなかったが行こうと始まってしまったリオは止められない

「まぁ、いつかは行こうと思ってたから…」

「やったー!そうと決まれば今から行こ!」

「え、今から?!」

「行動に移すなら早いに越したことはないでしょ?」

「はぁ。分かったよ」

僕はしぶしぶリオについていくことにした

そんなこんなで着いた丘の上

着くころにはあの夢と同じ夕方でどこか嫌な雰囲気を感じながら丘の上に立った

「久々に来たな~この丘」
「ここも変わんないなぁ」
「それでなんか思い出した?」

「嫌、全く」



「本当に何も思い出せないんだね」



僕とリオは突然後ろからかけられた声に驚いて振り返った

そこにいたのは夢で見た彼女にそっくりな女の子

唯一違ったことは瞳が赤くないことだ

その女の子の瞳は黒色だった

「君は誰?」

僕はそう問うたけど女の子は答えることはしない

「この丘はね私とあなたの思い出の場所」
「だから関係ない人は帰ってもらえる?」

女の子は突然そう言った

「え??たくみはあなたのこと覚えてないのよ?だから関係ないとか「ごめん。リオ先に帰っててもらえないかな?」どうして…」

「彼女と二人っきりで話がしたいんだ」

「…分かった。早く戻ってきてね」

「うん。ありがとう」

リオを見送った僕は聞いた

「君の目的は何?」

「…私はあなたに早く思い出してほしいだけ」

「思い出すって?僕は君と会ったことなんてないよ」

「嘘」

「え?」

「あなたは忘れているだけ」

「どういうことだ?」

「ずっと一緒って誓ったから…ごめんね」

彼女は涙ぐみこっちを見て言った

「___」

「え?」

次の瞬間彼女が目前まで迫り僕に向かってナイフを振り上げた

その光景は夢に見たのと一緒で僕は死を覚悟したのと同時にリオの言葉を守れないのが申し訳なく思った

彼女のナイフが僕の体に突き刺さるのを感じながら僕は目を閉じた


真っ暗な空間に僕はいた

「これが死後の世界?」

不思議と恐怖はなかった


そんな時どこからか声が聞こえた

女の子が泣いているような声だった

僕は女の子の元まで行くとそこには彼女の姿があった

だがさっき会っていた彼女よりも幼く瞳は赤い

僕は彼女に声をかけた

「どうして泣いてるの?」

「皆私のこと気持ち悪いって言うの」

「君の瞳が赤いせい?」

「うん。そのせいでお父さんもお母さんも私のこと殴るの。お前なんか生まなきゃよかったって」

「つらかったね」

僕はそう言って女の子を引き寄せて頭をなでてあげる

「でも僕はその瞳綺麗だと思うな」

「ほんと?」

女の子はそう言って顔を上げる

「あぁ、本当さ」

「ありがとう」
「私初めて綺麗って言われた」

女の子は花が咲くような笑顔でそう言った

僕はこの笑顔を前にも見たことがある

思い出した訳ではないけどなぜかそう思った

「君の名前は?」

「私の名前はアオイ!」

その名前を聞いた瞬間僕は激しい頭痛に苛まれた

「お兄ちゃんどうしたの?」

アオイちゃんがそう尋ねてくれるが僕は言葉に出来なかった

僕はそのまま意識を手放した




「…て…きて…起きて!」

その声で僕は目を覚ました

目を覚ますとそこはあの丘の上だった

「やっと起きた。もう、ずっと起こしてたんだよ?」

黒髪ロングに赤い瞳…
僕のことを起こした少女はまさに最初に夢で見た女の子にそっくりだった
それと同時に先ほど会っていた女の子にそっくりだったのだ

「…君はアオイちゃん?」

「そうだよ、アオイだよ!どうしたの(笑)いきなりちゃん付けなんかして」
「ヒロトらしくないよ?」

「…ヒロト…?」
「…僕のこと…?」

「何々?寝すぎて寝ぼけてんの?(笑)」
「あなたは霧崎ヒロト!私の恋人でしょ?」

僕は一体何を言われているのか分からなかった

僕の名前はヒロトではなくたくみだ
それにアオイちゃんの恋人とはどういうことだ…?
僕は生まれてこの方彼女なんてできたことないぞ?

訳が分からなかったが僕は一旦アオイちゃんに合わせることにした

「…そうだったね(笑)寝ぼけてたみたい。起こしてくれてありがとう」

「それなら良かった!」

「ところでここはあの丘の上?」

「そうだよ!ヒロトったらお昼寝しに行ってから全然戻ってこないから呼びに来ちゃったよ(笑)」

外はもう日が沈むころだった
それだけで僕はだいぶ寝ていたんだと気づく

「ごめんごめん、爆睡してたみたい」

「もぉ!早く帰ろう?」

「そうだね」

そうして僕はアオイちゃんについていくような感じで家に帰るのだった

「今日のご飯はカレーだよ!」

「カレー?!僕カレー大好きなんだ!」
(僕たちは一緒に暮らしているのか…?)

「知ってるよ(笑)ヒロトの好物にしたんだもん」

「そっか、ありがとう」

そんなやり取りをしていたら僕たちの家?に着いた

「もう出来てるから食べよう!」

「うん」
(やっぱり僕たちは一緒に住んでいるのか)

家の中には僕たち以外誰もおらず二人で暮らしているのだと分かった

それからアオイの作ったカレーを食べ、たわいもない話をしてベッドに眠りについた

隣のアオイはすぐに寝たが僕はなかなか眠れなかったので今日のことについて振り返っていた

そこで僕は疑問に思うことが合った

景色が現代とは少し違って見えたこと

同じ丘の上でも街を見下ろした時のあの風景は少し古さを感じた

ここは僕がいた世界とは別なのかもしれないと感じた

後は家に帰るとき住宅街や街のほうとは程遠いところに家があったこと

だがこれはなんとなく予想がつく

アオイの瞳だろう

あの女の子アオイちゃんもこの赤い瞳のせいで皆に気持ち悪いと言われると言っていた

もしかしたらあの子はアオイだったのかも知れない…などと考えていたらいつの間にか眠りについていた


それから僕はこれと言って思い出すことはなくアオイとの日々が淡々と過ぎていった

時には街に出かけたり少し遠出をしてみたりとアオイとの日々は少しづつ思い出に代わっていった

その時にやっぱりここは僕がいた世界より向かいの時代だということが分かった

テレビはあまり普及しておらず街の人たちの服装は和服と洋服がどっちも同じくらいいる時だった

テレビが主流では無かった為何か合った時は新聞が配られていた

だが僕たちの家は街より少し離れているため新聞を目にすることはあまり無かった

そんな何でもない日常が淡々と過ぎていきアオイと過ごして1年が経った


今では僕にとってアオイは大切な存在になっていた

普段外出するときはフードを被って居る為話くれる街の人も多い

だがアオイの瞳を見た街ものは皆“気持ち悪い”と言っている

それでもアオイは僕の前では笑っていた

そんなアオイを僕はずっと守っていきたいと考えるようになった

アオイと過ごした一日一日がとても幸せだった

ずっと過ごしていきたいと思っていた

僕はそれほどまでにアオイに惹かれていた




だが突然その幸せは崩れ去った



ある日数人の男が家に来た


「この家かぁ?赤い目の女がいるって噂の家は」

「ここで間違いないっすよ」

僕はとっさにアオイをタンスの中に隠して男たちの前に立つ

「ここに赤い瞳をした少女はいない。さっさと帰ってもらえないか?」

「なんだおめぇ」

「この家のもんか?」

「あぁ。帰ってくれないか?」

「そりゃ出来ねぇな」

「ここに居るって言う足取りはつかんでんだ」

「赤い瞳の子は居ないしそんな情報誰から聞いたんだ?」

「街の住人だよ」

「…」

売られたんだ。僕はとっさにそう思った

「やっぱり居るんだな」

「おめぇらさっさと探すぞ」

「「「うっす」」」

僕はとっさにアオイがいるタンスまで行きアオイを逃がそうとした

「アオイ、早く逃げて!」

だが相手は複数で到底一人では敵わなかった

「やだ!!!放してよ!!!!!」

「おっと、暴れんな嬢ちゃん」

「こいつがどうなってもいいのか?」

男たちは不敵な笑みを浮かべてそう問いかける

アオイは抵抗することを止めて連れて行かれ、僕はボロボロになるまで殴られた

骨の数本は折れている


だがそんなことよりも僕はアオイを守ることが出来なかったという虚無感と絶望感に襲われた


もっと早く街の人たちのことを説得すれば良かった
ちゃんとアオイのことを知ってもらえばアオイと仲良くしてもらえたかもしれない
アオイのこと、理解してもらえたかもしれない
もしそれで駄目だったとしても早々に引っ越せば良かっただけの話なのに


僕には後悔だけが残った


アオイはあの後どうなっただろうか

酷い事をされてないだろうか

僕がもっと強かったらアオイを危険な目に晒す事は無かったのに

僕がもっと丈夫な体だったらすぐに骨なんて折れないのに

傷が癒えるまでの間僕はずっとそんな事を考えていた

考えてもどうにかなることでは無かったが考えないなんて出来なかった



歩けるにまで回復したのはそれから一週間後だった



僕は少しでも情報が欲しくて街に出た



だが悪いことは続くもので


街の人たちが手にした新聞記事に




“赤い瞳の少女・目玉をえぐり取られた状態で死亡”




という文字書が目についた



僕は居てもたっても居られなくなり街の人から新聞を貰い急いで家に帰った



貰った新聞を読む


そこに書かれていた内容は目を塞ぎたくなる様な内容だった



赤い瞳の少女は3日前に目玉をえぐられた状態で発見

その他にも全身打撲・首を絞められた跡が残っていたという

更には工場のような場所で発見された為腐敗が進んでいたという


僕の心はぽっかりと何かが空いたようだった



それからというもの何をしても手につかず、食べる気力も失い頬はコケ体重は落ちていった


僕はこのまま死んでも良いとさえ思うようになってしまった


アオイがいない世界なんて生きる意味がないと


僕はその時ふと思い出した


夢の中でもリオと行った時も丘の上でアオイは思い出してと言っていた


思い出すというのはアオイと過ごした記憶のことを言っていたのでは無いか


アオイはきっと一緒に居たかったのでは無いか


そう思った僕は完全に体の力が抜け床に倒れた


そして僕は薄れゆく意識の中で完全に目を閉じた

終章

真っ暗な暗闇の世界



僕は前にもここに来た気がする
とそんなことを思っていると


目の前には

愛してやまない彼女がいた



「遅くなってごめん。また会えてよかった」


そう言った僕の言葉に彼女は答える


「遅いよ。待ちくたびれちゃった」


今度は涙ぐむのではなく飛び切りの笑顔で




今となってはたくみの時の僕が何だったのか


どうして記憶が無かったのか


何故アオイは目の前に現れることが出来たのか


色々な不可解なことが残っているがそんな事はもうどうだって良い



僕は今とても幸せだから

君ともう一度

この作品を読んでいただきありがとうございます。
無事完結させることが出来て良かったです。初めての作品な為意味不明だったりするかもしれませんがそういうのも含めてミステリーさが出てると思いたいです(笑)
この作品は二次創作大丈夫な作品な為終わり方に納得しなかったり内容こっちの方が面白いんじゃないかと思う方はどしどし変えちゃってください!そしてそれを読ませてください(笑)
次の作品(書くか分かりませんが)もよろしくお願いします!

君ともう一度

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