二月の海でこどもたちは光り輝く

あおい はる

 こどもたち、はねる、海のうえ。
 冬が、そろそろ、おわろうとしていることを、すこしばかり、なげいている。早咲きの桜が、花ひらいて、きみが、だれかのかなしみに敏感な夜には、桜の花が青白く、光る。まるで、連動しているみたいね、きみと。
 こどもたちのあしもとで、海が、白い泡をたて、それも、また、花のようで、泡の花、すくいあげると、きえてしまう、その儚さを、ときどき、夜釣りをしているクマが、うつくしいと云っていた。こどもたちは、みんな、一様に光り輝いていて、そして、笑っていて、はねる、というより、踊っている感じで、魚たちは、海面が、あんなに騒々しくて、眠れるのだろうかと、きみは心配していて、夜釣りを楽しみたいクマからすれば、ちょっと迷惑、とのことだった。
 夜の海からみる、わたしたちの街は、昼間とは、なにか、どこかがちがっていて、みたこともない建物が、存在していて、けれど、実際に、間近でみたことはなくって、というか、近づけば近づくほど、その建物は、遠のいてゆく、ふしぎな建物で、三角屋根の、西洋のお城の、塔のような、一体なんなのか、まるでわからないのだけれど、とにかく、夜にだけ、その建物がみえることは、確かである。わたしたちは、サマーベッドに座り、海のうえのこどもたちを、ながめている。ざっと、二十人ほどはいるが、日によって異なり、三人のときもあれば、百人以上のこどもが、はねていることもあって、さすがに百人を超える、光り輝くこどもたちがいる海のうえは、いくつものイカ釣り漁船が浮いているときよりも、まぶしく思えた。
 きょうも、だれかのかなしみを察知した、きみは、じぶんが、ひどくかなしい出来事に直面したかのように、悲嘆にくれている。
 夜の海からみる、わたしたちの街は、やはり、なにかがおかしくて、例の三角屋根の建物も、あって、でも、このあいだよりも、なんだか、西に寄ったような気がする。街の西には、テレビ塔がある。テレビ塔との距離が、以前よりも、縮まったような気もする。
 夜釣りのクマは、三十分ほど前に、家に帰った。二十人のこどもが、あれだけ光り輝き、踊り、はね、笑っていれば、魚たちもびっくりして、あらわれないというものだ。
 どこからともなく、桜の花びらが、ひらひらと舞いおちてくる。
 冬のおわりは、もうまもなく。

二月の海でこどもたちは光り輝く

二月の海でこどもたちは光り輝く

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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