トイレの隅

ちひろ

トイレの隅、僕が小さい時隠れてた場所。僕が大人になった時もういらないと吐き捨てた場所。僕がもっと大人になった時、ここは他の誰かの場所だと泣いて帰った場所。彼女が来て言った。「汚いわ」他の誰かを見て言った。僕の居場所でもあるのに?「もうあなたの居場所じゃないわ」そうなんだろうか?僕はいつも子供の頃ここでうずくまって泣いたのに。彼女はゴミの掃き溜めを見るような目で僕を見ずに言った。「あんなところにいるべきじゃない。あなたは変わったのよ」本当にそうだろうか?僕が求めていたのに、僕の方からいなくなって良いのだろうか?ある日、母さんが言った。「あの時、あなたはいつもあそこで泣いてたわよね。子供みたいに」少し涙を浮かべたその目は遠くを見ていた。「母さん、元気になったら帰っておいでよ。新しい家を買ったんだ」母さんは目を大きく見開いてこう言った、「あの家を売ったの?」母さん、シワシワの手が今にも崩れそうだ。あの日、僕はもう一度あの家へ帰ったんだ。誰もいない、あの家へ帰ったんだ。その時彼女は一緒にいなかった。誰もいなくなったあそこへ僕はもう一度行ったんだ。僅かに黒ずんだ床を眺めて、「母さん、ここはそんなにいいところだったかい?」ガタン。誰かが扉を閉める音がした。ああ、あの時も確かこんな風に誰かが...。

トイレの隅

トイレの隅

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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