月夜の幻想

秋津 澪

 なにもかもを優しく抱く残酷さを有った群青いろの夜空には、きんと硬いがらす加工がされていて、どんな花々を打ち上げようと、そのがらす質の(おお)いはきんと硬質な音を立て冷淡に撥ねかえす、果てしのない星々の霜は果たされなかった約束のように銀いろに散りばめられて、僕は夜空へまっさかさまに墜落して往きたいのだ、されど彼方のがらすはそれをゆるさない、玻璃の硬き響き曳き散らす、僕の恋する真白の月、こい焦がれる月、表層に陰影をはべらせる、死の翳さながらあわく青みをにじませる。よもすがら僕等は、眩暈にみおろされているのだ、僕はそれ等の光源がむこうがわのそれなのか、果してがらすに張ったそれなのか、それすらも識ることができないのだ。
 真白の月に話し掛けた。
「きみがどうしてそんなに美しいか、僕の意見を聴いてくれるかい?」
「どうして?」
 かのじょの声は降るぴあの、地上をたたいて燦って散って、つぎつぎに霧消して往く。
「どんなに手をのばしても、けっして届かないからなんだよ」
「けれども私、」
 と月は反駁した。
「いつもあなた達の為に、泣いているわ」
 せつな僕の涙と月の光は綾織って、それは風になびく絹のひかりで、わが()でさらさらとせせらぎを立てた。がらすは壮麗な夜空を絵画としてうつしながら融けていき、海のように波うった。

月夜の幻想

月夜の幻想

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-02-09

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