あわれ蛾

秋津 澪

 うすっぺらい翅を傷つかせた
 灰いろのあわれげな蛾が、
 手さぐり 手さぐりする
 ひざまずいた男の病んだ腕のように
 冷たい土を這い、おろおろと動いて、
 探し物の不在に、身をふるわせる。
 その惨めったらしい姿よ。不幸面した滑稽な蛾よ。

 あわれげな蛾はなにかをさがしている、
 おそらくや無いものを求めている、
 それがなにかはそ奴にもわからない、
 飛ぶちからを失った翅は重荷にすぎぬ、
 そもそも飛べたかも定かでない。
 ただそ奴 あわれげな蛾は、
 欲のままに生きる孤独が、淋しいのだ、
 燃ゆる魂のあげる、鮮やかな閃光を視たいのだ。

 うすっぺらい翅を傷つかせた
 灰いろのあわれげな蛾が、
 冷たい土を這い、おろおろと動いて、
 探し物のないことに、身をふるわせる。
 日陰の醜い蛾よ、ついに死を赦されるまで、
 くるしみたい苦しみを、かってにくるしめよ。
 真白(ましろ)の花が花弁をふるわせ、けらけら嗤っている。

あわれ蛾

あわれ蛾

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-02-09

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