坂道の下り方
まるでネズミ花火と歩くように
足がもつれて引っかかるけれど
動き始めた季節を予約する
心臓の位置が高く上がるほど
景色よりも先に進めるから
あらゆるものへ届く気がしていた
頬が染まる前のきみの夢とか
歌が始まる前のぼくの声とか
大切な場所には階段がない
パラソルやひまわりの側に立って
無意識のうちに背中を開ければ
飛べそうな羽根があることを
きっと何度も信じて来たのでしょう
緩やかな角度で助走をつけて
駆け回る坂に終わりが近づき
傾く夕陽を見つめる時間は
瞳をどこかに置き忘れたまま
きみが蹴飛ばした石の数だけが
ぼくの影の上で喧嘩しながら
福笑いになるまで転がった
坂道の下り方