落ち穂拾い

片思いってのは半分両思いみたいなもんだ めげるな私

新宿は光にみちてもうすぐで午前0時が転覆しそう

東京の空は狭くてぼくたちの光合成に適していない

公園に取り残された蛇口から夜がしずかにしたたっている

草いきれめっちゃ臭うし白亜紀がまるで昨日のことみたいだね

うたた寝をしているきみは軟らかなサナギのようで無防備すぎる

蒸し暑い夜のデネブはどことなく目をうるませたみたいに光る

わたあめにはしゃぐ貴女の夜会巻きなぜかずるいと思ってしまう

関くんは童貞だけどよく見ると殺人的にまつげが長い

みそ汁のあさり一疋閉ぢてをり さうかおまへも失恋したか

苺でも摘みとるやうに軽やかにしゃがみて君は雪を掬へり

雪玉はひとつひとつを大切につくる派なりし初恋の人

春先のつがいのアライグマは恋ダンスを踊る習性がある

「はちゅなちゅ」と甘えて呼べば、はつ夏が続いてくれるような気がした

もう午後で部屋が寒くて生きる意味なんかないんだなってなってる

しあわせはファミマで買えるなら欲しいけどセブンまで行くほどじゃない

もうごはん食べるのだるい。カフェラテの泡だけ食べて生きていきたい。

夢なんてない。しかたなくレトルトのカレーのパウチをあたためてみる

おれだって愛がほしいぞコンビニで買えるプリンじゃ物足りないぞ

このスフレチーズケーキは我々の劣等感の象徴である

じんせいのままならなさに泣きそうなので、今晩は肉を食べます

化けの皮が剥がれぬように縫いつけてわたしをテディベアにしてくれ

【はる―はやて】[季]春少女の髪を乱す風を一語であらわすことば。

貝殻の中では今も「好きです」のθの音だけが渦巻いている

じゃがいもが煮崩れていくようにしてきょうという日も終わるのだろう

さっきまで夜空にあった冬銀河だったら俺の横で寝てるぜ?

だーくそぉ、じんせいどうにでもなれと叫べば白い息消えにけり

今月は赤字なる家計簿の一ページをふっとめくる春風

なにもすることがないのでなんとなくアキレス腱を伸ばしています

牛乳をストローで飲むことによりなにかに抗おうとしている

じゃがいもの皮を剥くのにこんなにも無心になれる自分がこわい

降るような星空なれどこの星に落ちしはついに吾一人なり

パンダたるもの何事も本気では為さずぐうたらやりすごすべし

カモミールティーの温度を感じとるための器官としての手のひら

茹ですぎたパスタみたいになんかこうふにゃっと笑う娘がタイプです。

「オッス!オラ悟空!」と名乗れ、そうすればまず大抵の敵は倒せる

マカダミアナッツが好きな男ほど将来ハゲるリスクが高い

童貞である男性の8割はみかんのすじを丁寧にとる

誰だってどこか惰性で生きていて、だからときどき炒飯を喰う

かなしみはもうたくさんだとりあえずアイスショコラもココアと呼ぼう

おっぱいは揉みたい。夢は叶えたい。ぼくはまだまだ死にたくはない。

唐突に叫びたい…この衝動を抑えきれない…うーぅまんぼう!

青い鳥文庫のなかで見たようなきれいな日々が欲しかったんだ

「今日なんもしてねえなぁ」とぼやきつつ寝返りを打つ。だるさがやばい。

すずしいとよく寝れるのでどちらかというとすずしいほうが好きです

おれはもう寝るぞと決意してからがホントの夜のはじまりですぞ。

太陽が昇るそんなのあたりまえじゃんってことがじつは尊い

蔦紅葉ばかりが徐々に色づいてぼくはちっとも成長しない

哲学は好きですか?まだ紅くない紅葉はやはり紅葉でしょうか?

憎らしいあいつの頬に投げつけるのにちょうどいいレモンを選ぶ

バオバブにきらきら注ぐおひさまの光のような人でありたい

何にでもなれる気がしたあの頃のおれは幼いガチャピンだった

ヒトとして息をしている片手間にルッコラだけのサラダをつくる

せつなくてかなしくてすこし泣きそうでいなばのトムヤムチキンがからい

すすきにはすすきのための風が吹くおれもちやほやされたいぞ、くそぅ

夜もすがら泳ぐくじらのくちぶえは浜辺に寄せるうたかたになる

はつ恋は7歳のとき。ねり消しをとても上手にこねる娘でした

しょっつるを適度な濃さに薄めたら海を再現できないかしら

諸々の事情があって好きな子にパントマイムで告白をする

風鈴のかたちは最上もがに似てちろりろりんとしたまんまるだ

夏の果て空はあんなに青いのに線路はどこまでもは続かない

海鳴りがささめいて繰り返すのはたぶんスワヒリ語でさようなら

タジン鍋だってきっちり魔改造したらUFO代わりになるよ

我こそは大魔神ピロシキなりと叫んでみたい衝動がある

こもれびは目にやわらかにめくるめくポムポムプリンみたいな黄色

アルパカの気持ちがなんとなくわかる程度に鍛えられた女子力

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常夏のイオンモールを駆け巡るぼくはいまだに迷子のままで

おおらかに生きてみたいね死んだのに気づきもしないゾンビみたいに

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泣くならばざわざわ森のがんこちゃんくらいガツンと泣くべきだった

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いままでのごめんをぜんぶつぎ込んでしろく固めた牛乳プリン

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あなたからとどめを刺してほしいからこの心臓は止めないでおく

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くつくつとホーロー鍋でマカロニを茹でる七分間の夕暮れ

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ゴーフルとゴーフレットのちがいくらいちがう私と昨日の私

拗らせた僕らの夢はとろけ合うねるねるねるねみたくふしだら

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ぼくたちの短歌はどこかちぐはぐで出来損ないのキメラみたいだ

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今朝もまた「キュアップ・ラパパ!」と唱えつつ魔法瓶へと注ぎし煎茶

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雪が、降る。降る。降っている。降り積もる。降り積む。それで、そのうち消える。

平積みの「夜は短し歩けよ」と励ますごとき馴染みの本屋

落ち穂拾い

落ち穂拾い

うたよみんとうたの日から

  • 韻文詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-07

Public Domain
自由に複製、改変・翻案、配布することが出来ます。

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