上澄み境界

(まゆ)籠城(ろうじょう)して声の平熱が上がる。変色。変形。声で声が()かされる。二価の強酸に"Nice to meet you"の原型を奪われていく。わたしはだれ?

「たすけて、たすけて。」

ここはどこ?

絶えず(ゆが)む。歪まされてる。おかしくしたのはいったいだあれ?どこが天井かわからない。どこも天井かもしれない。鱗片がゆらゆら。ゆらゆら。ちぎれた記憶が繋がらない。やわらかさも逃げていく。もはや慣れ親しんだ文法も思い出せない。ゆるやか、ゆるやか、ゆるやかに。崩壊していくこの感じ。

「ことばの愛情表現なんて、もう信じないよ。」
「つぎはお互い首を切り落としてから逢おうね。頭がなければ、からだも使わなくて済むでしょう?」

天井はなかったけれど、境界は確かにあったんだ。
さよなら、また来世。

上澄み境界

上澄み境界

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-06

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