僕にも目はある

たれめ

意思を持たないようで、僕らが意思を与えてないだけなようで、実際は意思を持ってる

優先する権利は座席にもある

君じゃない

お前でもない

なぜ、みなこうも躊躇せず僕に座る

座るに値する人間だと自負しているのだろうが

俺からすると全く以って、資格なしだ

ただ歳だけ取って威張ったおっさんや

譲ってもらったくせに礼も言わずに僕にふんぞり返るおばあさん

土足で僕に立つ子供やそれを全く注意できないお母さん

足の角度が90度以上開いて座るお兄さん

君たちは座られる僕の気持ちを考えたことはあるのか

人に優しくあるために作られた僕が優しさのない光景を目の当たりにしている

だからこそ僕はわがままを言いたい

実は、僕はあの子を座らせてあげたい

朝の6時に僕の電車に乗り込み、夜の11時にまた見かける

ふらふらした足取りで毎日立ちながら寝てる君だ

靴底をすり減らして革のカバンを削って

目の下に黒いクマを作りこんで毛先に潤いがなくなって

電話がかかってくることに怯えて頬がやせこけて

ため息を最低6回を吐いてしまう君だ

そんなに頑張らなくて良いんだよ

頑張ってるところを僕は見ているから

もし本当に頑張りたいのなら遠慮せずに僕にお座り

その肩に乗った重荷ごと、僕に載せてしまえばいいよ

君とまとめて、支えてあげるから、

無理はしないでね、僕はずっとここにいるから

いつもいるからね

僕にも目はある

僕にも目はある

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