週休二日
月曜にまた最初からやり直すまだ比較的嘘は少ない
火曜には古い系図を焼いたあと縮んだ影が戻るのを待つ
水曜は急に雨降りアラームは忘れられても忠実に鳴る
木曜に届いた本は誰からも気づかれないでポストにはいる
金曜は長い廊下を抜けたあと中庭で目的を忘れる
月面はとても静かで寂しいとやっとあなたが語りはじめた
下からの風に吹かれて火のふりをさせられている赤いビニール
逃げ水の逃げるほうへと逃げていくいつかはいなくなりたいけれど
貯めこんだ木の実のことを忘れてたどこも砂漠になってしまった
金網の破れを誰も直さずに忘れられたい気持ちを示す
僕たちが小さく見えてしまうのにみんな集まる展望台へ
夕焼けの運動場のトラックは滅びていった獣にあげる
水のない花瓶に造花をさしている冒とくされているのは誰だ
標識を守って進む道の先空が広いと哀しくなるね
控え目に物音をたて検針は気配の消えた廊下を順に
月光に呪いほどけて言葉では通じないことばかりこぼれる
片隅に堅く封印されている使用禁止の旧焼却炉
行進は前進よりも踏みつけるための足音たてて近づく
殺処分のニュースのあとで名を呼ばれ白い部屋へと誘導される
叫ぶように電話で話すその声の隙間に鈴の音が聞こえる
ポイントの期限が切れてしまうことわかっていても失くした恋よ
もう夢を見はじめている秋のチョウやがて飛べなくなる飛びかたで
そのたびに澄んでいくから高らかにケトルを鳴らし笑いだす水
未来にはとても大きな木があってなにも覚えていないのだろう
愛してはいないのですが空間を鏡で広く見せてはいます
まだ若い語り部だけが生き残り少し明るく変わる伝説
先っぽに洒落で乳首をつけたってミサイルだからあとは火の海
水源が涸れて砂へと変わる頃みんな飛ぶのをやめるのだろう
木製のベッドでずっと眠らない子供が遠い呼吸を盗む
金銀の折り紙で折る舟だから沈まないって信じていたら
人形に月の色したうすいカビおやすみ誰も助からないよ
消えていく灯りが映す残像にヒントがないかさがしています
水平もいずれ傾く傾いて転がる先が新しい西
机からはみだす地図がほしかった二度と戻ってこられぬように
通りぬけ専用道路を録画して見分けられない顔を見ている
この先は有料ですと嗤われるすでに尻尾がはえているのに
少しずつ降っていたのは灰でした気づいたときは隙間も埋まり
探しても見つからないよ夏の日の泡立つ水がいちばん青い
楽団員を名乗る男はこの指の変形が証拠と言うのだが
あの音は鉄っぽいよね重たくてヘリが飛ぶたび顔見あわせて
三日月の形で月を絵に描いたおなかいっぱいにはなりたくない
ひよこ型時限爆弾街をゆく大人になれぬ運命抱いて
最初からとり残されてしまうことわかっていたと言う水たまり
僕たちが甘い思いで待っている世界を潰す大きな機械
金魚鉢ずっと金魚がいないのでいっそお墓になりたかったな
早朝に安い玉子を食べすぎて賞味期限は守る月曜
点滅の滅になったらあらわれる仮想トカゲに噛まれる火曜
手も足も出せずに自動運転で境界線を越える水曜
握ったらちょうどよかった木の棒を拾って置きっぱなしの木曜
あいさつは軽くすませてこれからは長いやすみにはいる金曜
週休二日