聖者の行進(2)

二 行進風景

 ここはM商店街。アーケードが連なる。T市の目玉のメインストリートだ。一時期は、郊外にショッピングセンターが乱立したため、駐車料金を払わないといけない商店街に足を運ぶ客は減り、また、商店街も、女性服など、ファッション関係の店ばかりで、対象のお客さんが限定されたため、客足は大幅に減少した。商店街のアーケードは、通勤・通学のサラリーマンや学生たちの、雨よけや日よけ、夏には暑さよけ、冬には寒さよけのためにしか活用されなくなった。
 そこで、街の有志たちが、このままでは街の未来がなくなってしまうと危機意識を持ち、都市計画プランナーの力も借りながら、行政と一体となり、新たな街づくりに取り組んだ。その結果、街が再び、賑わうようになった。
 商店街のドーム下では、毎週土・日曜日には、音楽関係など様々なイベントが開催され、人が集まるようになってきた。商店街に、街ぶら、人ぶら、の雰囲気が戻って来た。手には、ジュースやコーヒー、中には、だんごやてんぷらなどの食べ歩きしている者たちもいる。
 人で賑わい、活気に満ち溢れる商店街だが、先ほどまで、道の真ん中を歩いていた人たちが、自然と両側に分かれていく。ちょうど、真ん中が空白地帯となる。
 何故?街ゆく人も、何故なのかわからない。何かが見えるわけでもないし、何かが聞こえるわけでもない。なのに、道の真ん中から左右に分かれていく。なんとなく感じるのだ。何を?何かが道の真ん中を闊歩している。だから、それを避けている。それも一人じゃない。二人でもない。集団だ。行列だ。だが、誰にも見えない。誰にも聞えない。そう、霊の集団だ。

みんなで歌おう
みんな仲間入り
聖者の行進
町にやってきた

誰でも歌える
声を合わせよう
ほら、聖者が来た
町にやってきた

 笛や太鼓に、口笛、拍手。中には、靴を両手に持ち、鳴らす者。割りばしで空き缶を叩く者。みんな、思い思いの物で、音を鳴り響かせている。ちんどん屋?それにしては、服は洋服から和服まで、Tシャツ・短パンから背広にネクタイ、割烹着からドレスまで、様々だ。仮装パーティ?確かに喜んでいる人もいるし、泣いている人もいる。顔の表情を変えない人も、顔が崩れた人もいる。死んだ時のままの服装や状況なのだ。先頭には、ポンチョをまとった男と幼稚園児ぐらいの男の子と女の子が歩いていた。彼ら霊は、どこへ行こうとしているのか。

聖者の行進(2)

聖者の行進(2)

死んだ者たちがかつて生きていた街を行進し、どこかへ向かう物語。二 行進風景

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-31

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