風を切る

放課後だけが人間だった

17歳

自転車を漕いでいた

毎日 毎日 目的地もなく

風は感情で

身体(からだ)から這入(はい)ることもあれば

心臓から吹くこともある

扁桃体(へんとうたい)に命令する

不安にならないやつは優しくなれないと

喉の真下に落葉松(らくようしょう)

感覚器官に防波堤を

風の悪戯(いたずら)に負けないように

必死に自転車を漕いでいた

風に()み込まれぬように

自分が風にならないように

必死に自転車を漕いでいた

17歳の夏

風を切る

風を切る

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-03

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