詩集.想いをこの束にして(十一束目)
切望の編 一
どれだけの
想いを
込めれば
願いは
届くのだろう
見上げる
星屑と
同じ数だけ
叫べば
いいのだろうか
行く手に
はだかる
君の
苦しみを
どこかに
祓う
術があるなら
たった
今
この血で
この身を
贖う
せめて
今宵も
瞬く光が
全ての
変わらぬ
優しさの内から
そっと
あなただけを
包み込んで
くれますように─
切望の編 ニ
「幸せ」の
音が聴こえる
あなたの
名を
思い返す度に
トントン、と
屋根を打つ
冷たい
雨だれが
温かな部屋に
訪いを
入れて
賑やかな
歓待に囲まれる
よかったね
また
出逢えた
安心したよ
そんな
嘘のない
優しさに
包(くる)まれて
あなたの
笑みは
また
一層
煌めいて見える
僕は
少しだけ
進んだ
この場所から
振り向いて
ちょっとだけ
危なげな
その脚元を
いつだって
見守るんだ─
切望の編 三
今
紛れもなく
あなたは
輝きに
満ちてる
自分の
ために
踏み出した
その先を
見上げて
向かい風の
ざわめきを
喝采に
喩え
ぬかるみを
恵みと
信じ
強くなくて
いい
泣き虫の
ままでいい
ただ
優しいだけが
いい
そんな
あなたの
ためだから
今日も
恋文を
したためられる─
切望の編 四
微かでいい
その心が
息を継げるなら
何を
惜しむだろう
苦しみが
澱み
纏わりつくのなら
生爪を
剥がしてでも
引き裂いて
あげる
信じてるんだ
道の先を
阻む
宿業と
同じだけ
めぐり逢い
求める
強かな
愛があることを
伸ばした
僕の
この掌は
温かいかな
淋しそうに
立ち尽くしてる
君を
包み込めるかな
どうか
どうか
放さないで
君だけを
護りたくて
今
ここにいるんだ─
切望の編 五
寒風に
紛れて
微かな
息づかいが
聞こえた
火照った
耳元に
確かな呼吸が
ふと
振り向くと
寒椿の
紅が
息づくみたいに
その
欠片を
揺らしていた
ここで
いい
荷物を
置こう
あの長い
坂を
越えて
向こうの
朝(あした)を
迎えるために
昨日は
もう
直きに終わる
辛いこと
哀しいこと
もう
みんな
お終い
負けなかったね
頑張った
よく
頑張った
ほら
あと一息で
また
新たな
陽が
満ちる─
詩集.想いをこの束にして(十一束目)