ひとりの夏祭り
マグネシアの灯りがわたしのこころに棲みついて、春・秋・冬を鏖殺しました。孤独という名の飴を舌癌になるほど舐め続けていました。孤独は水分を肥やしにわたしに気付かれないように拡がっていき、蔓のように全身を雁字搦めに這っていきました。わたしはあの日から夏の魔物に取り憑かれてしまったようです。拝啓、金沢のあなたへ。お元気ですか。わたしは少しばかり、世界を病ませてしまいました。あなたと過ごした時間だけが、本当の夏だと思っていました。否定を重ねれば重なるほど、画は甘言を放ってきますね。忘却は愛に含まれますか?あなたの顔と声、そしてことばを蔓から彷彿とさせられては金縛りのように感傷が全身を蝕みます。病名はあなたです。あなたとの夏を嘗試してしまったがために、あなたのいない夏がすべて紛い物にしか見えなくなりました。四季から夏が死にました。わたしの140字、憶えていますか?心の温度を測るサーモグラフィーがあるとしたら、すぐにわたしの網膜に搭載して捜しにいきます。あなたと、あなたとの夏を。逢いにいきます。忘却は愛に含まれますか?いま必死に夏に、心肺蘇生を施しています。マグネシアの灯りがわたしのこころに棲みついて、春・秋・冬を鏖殺しました。
ひとりの夏祭り