花祭りの夜
花祭りの夜
山麓を彩る無尽蔵の花が散ったから、
幾つかの異論を退け、
やがて銀色の光から生まれた飾り子の一声で決裁された花祭りの夜。
この唐突な秘匿を決して知らない、月明かりの幾千里の潮の砂辺の君は、
異星の季節に迷い込んだひ弱な風の様に、
夢に必ず違いないと確信して、
豊潤な裸子植物の女達が連なるその踊りの輪に、蜂のように近づいた。
いったい、放射能がずんむり降り積もった朝に、
季節と季節の契りの幻を見る君の神経は、
既にあの年号の化け損ないの狐より、
いささか狂っているのだろう。
それとも、世界の真裸の狂気の総量と釣り合うためには、
私の狂気よ、もっと、夢見よと、
君もあからさまに言うのか。
そうして、その孤独な同盟は、アフリカの青白い月の下のアルナイナ菌よりも獰猛なのか。
月が道化のように佇むから、宇宙は摂理というより、むしろ情念の狂おしさで、茫茫の欲望に微笑んでいた。
日本人と言われる混血の果ての種は、当たり前のように全てを受け入れている。
だから、涙の粒に摂理の全てを積み込んで、その、異風の民族は自らを名乗ろうとした。
草也
労働運動に従事していたが、03年に病を得て思索の日々。原発爆発で言葉を失うが15年から執筆。1949年生まれ。福島県在住。
筆者はLINEのオープンチャットに『東北震災文学館』を開いている。
2011年3月11日に激震と大津波に襲われ、翌日、福島原発が爆発した。
様々なものを失い、言葉も失ったが、今日、昇華されて産み出された文学作品が市井に埋もれているのではないかと、思い至った。拙著を公にして、その場に募り、語り合うことで、何かの一助になるのかもしれないと思うのである。
被災地に在住し、あるいは関わり、又は深い関心がある全国の方々の参加を願いたい。
花祭りの夜