カムイ革命
カムイ革命
カムイ革命
縄文の断層が絶叫し
海が裂き砕け
風が泣き狂い
溶解し、炎上した原子炉の修羅がのたうつ。
20秒の炸裂が世界を反転させた
天地神明が被爆した
終末の覚醒が遺伝子に染色されれ、記憶に痛ましく植樹される
風雨が凶弾に豹変する
3月の大気のおぞましい裂傷から放射線が降り落ちる
太郎の屋根に
次郎の夜に
花子の夢に
放射線がさわさわと降り注ぐ
いわき平に
吾妻山に
安達太良に
阿武隈に
猪苗代湖に
安積野に
福島の全てを越えて、又三郎の学校に、富士のふもとに到り、放射能が降り積もる
恥辱の裸体を放射線が強姦する
細胞の連結が切り刻まれる
最終兵器が自然を仮装する
カムイの地が核に占領された刹那
人民に対する国家テロがいままた発動した一瞬
世界史に烙印されたFUKUSHIMA
この地こそが、いまこの時、分解の最終過程に佇む
神経が呪縛する
言語が氷結する
自尊が暴虐される
ああ、無常という剛直な無情よ
冷徹な科学は屹立しないのか
侵略され処刑され拘束され晒され詐取され強奪され差別され嘲笑され収奪され犯され簒奪され蹂躙され殺戮され占領され同化され支配され、赤裸々に搾取され続けた私達の歴程よ
私達のひとりひとりよ
ひとりひとりの慟哭よ
ひとつの赤涙よ
歌は止み
花は散り
屈辱の杯に毒が注がれ
絶望の馭者が疾駆する
死の共鳴が刹那を奏でる
それでもなお獣達の科学は羞恥を隔絶し、類との和解を拒否する
隠蔽の美学を掲示する
県境を恐怖の境界線とした政治の陰謀
官房長官の虚空の重層から混迷が巣だつ
CMに絶ち切られる記者会見
絶叫する情念のさまざま
継ぎはぎの幻想を矢継ぎ早に出産する情報
真裸の構造の頂上で天皇がおぼろに祈祷する
異形の神仏が一斉にたち現れる
カルトが経済の整合に憑依し闊歩する
五月雨が、新潟港、東京湾を汚染し
アスファルトにへばりついた核が舞い上がり青い風になったが、人々は無視と忘却で新しい季節を迎えようとした
弛緩仕切った傲慢が豪奢な非日常に目が眩んでいるのだ
無様な当為者たちの怠惰な弁明が施錠される
権力の枢密が暴露される
この幻想体の核心は蜃気楼の神話だ
真実の探偵は反逆の徒なのだ
情緒が波頭を漂流し論理は帰港しない
模糊こそがこの神族の同一なのだ
そして、矛盾の均衡が再び始動しようとする
嘆息と絶望がまたたく間に現実に氷解し満開の春を彩ろうとする
さあもはや、アテルイよ、出でよ
清原、藤原、義経、甦れ。
将門よ、起て
政宗よ、目覚めよ
榎本よ、土方よ、共和の夢を再び語れ、独立の唄を指し示せ
奥羽越列藩同盟よ、翻れ
名もなき反逆の人々よ、今こそ葬送の祭司となれ
辺境の民よ
エミシの民よ
縄文の民よ
漂泊の民よ
北方の樹々の息吹よ
南方の潮の流転よ
まつろわぬ人々よ
異民の君よ
歴史に潜み悠久の森に息つく戦士達よ
遼原の朝日にたち現れよ
縄文と弥生の抗争をつぶさに演出せよ
君達こそがこの日のために生きたのだ
今こそ、私達の誇りに呼応せよ
公憤を支柱とせよ。
この状況の屈辱を憤怒で刺し貫け
草の魂に火を放て
桓武と田村麻呂に繋がる謀略と系譜をなぎ絶て
ピリカよ、弱き者達を率いて山脈の奥深き楽土に密め
豊潤な骨盤に奇跡を孕め
白き乳房で希求を繋げ
青き狼達よ
革命の山河に季節と共に雌伏せよ
叡知を集結せよ
情念を論理に変換し歴史を貫く矢を放て
倫理の草種を蒔け
強者達よ
真夏の昼よ
自らの大地に自ら存れ
ヤマトを反措定せよ
世界と靭帯する共和国を設計せよ
さあ、もう5月、青龍が翔びたつ
いまこの時、カムイ革命が始まったのだ
草也
労働運動に従事していたが、03年に病を得て思索の日々。原発爆発で言葉を失うが15年から執筆。1949年生まれ。福島県在住。
筆者はLINEのオープンチャットに『東北震災文学館』を開いている。
2011年3月11日に激震と大津波に襲われ、翌日、福島原発が爆発した。
様々なものを失い、言葉も失ったが、今日、昇華されて産み出された文学作品が市井に埋もれているのではないかと、思い至った。拙著を公にして、その場に募り、語り合うことで、何かの一助になるのかもしれないと思うのである。
被災地に在住し、あるいは関わり、又は深い関心がある全国の方々の参加を願いたい。
カムイ革命