かなしみ空中分解
(れもんの色が、きれいにみえたから、きみのこころも、すきまからそっと、のぞけたらいいのにって思った)
花のひつぎに、あの、みずうみにすんでいたものたちが、ねむり、朝靄のなかで、白いドレスを着た女のひとたちが、おどる頃、星は、ゆるやかに、覚醒してゆく。
いつまでも、笑っていて。
そう、ぼくに云った、あのひとが、カメラのシャッターを切るとき、いびつだった箱庭は、一瞬、うつくしい楽園へと、変化する。
額縁に囲われて、きみは、なにを想い、みずうみにすんでいたものたちが、花のひつぎのなかでみる夢は、なに色で、あのひとが、ファインダー越しにのぞいていた世界は、みんな、ほんとうに、現実だったのかを、かんがえるときの、すこしだけこころを、むしりとられる感覚。こわいよ。
あのひとしかつくれない、あの、ぶあつくて、ふかふかの、ホットケーキを、たべられないことが、かなしくて、美術館の、いちばん目立つところで微笑んでいる、きみを観ては、泣いてる。ひとりぼっち、という言葉が、好きだけれど、きらいで、いま、ぼくの目にうつるもの、すべてが、にせものだったら、いいのにねって、雨の夜は祈ってる。
濡れた窓に、町のあかりがにじんで、みんな、泣いているみたいだ。
かなしみ空中分解