【超短編小説】死期

六井 象

 新聞のラジオ欄を見ていたら、真夜中の時間に「死期」という番組名を見つけた。どんな番組なのだろうと夜中まで起きてチューニングを合わせると、クラシック音楽の短い旋律の後に、男が咳をする声が流れ始めた。じっと聴いていたが、延々と、それだけ。止まったり、連なったりを繰り返しながら、番組は延々と、男の咳の声だけを流し続けていた。そして十分くらい経った頃だろうか、男の咳が一層激しくなったかと思うと、急にぱたりと止んで、あとはしんとして、何も音がしなくなった。チューニングを確かめても電源を確かめても異常はない。放送事故かと思っていると、いきなり抑揚のないアナウンサーの声が聞こえてきた。「予定より早まったため、今夜の放送は以上になります」そしてザーッ、というノイズ。急に恐ろしくなり、慌てて電源を切って布団をかぶった。翌朝起きてみると、昨日の新聞がどこを探しても見つからなかった。

【超短編小説】死期

【超短編小説】死期

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
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