セベラルノーツ

綿菓子が精液を垂らしている 試験管の底で孤独な生命がまたひとつ またひとつ 無機質な産声が水槽に響く ザアアアア ザアアアア 血漿で出来た水槽に響く ザアアアア ザアアアア 雷撃が坤軸に亀裂を入れ 打擲音で魚群が横隊を成す 大地が口角を上げ 東京に告げる 死ねと 涎が雌蕊(しずい)を撫で高圧電流が流れる その瞬間 空と大地が接吻(くちづけ)を交わし 地殻が嗄れた嬌声を上げる そして わたしたちは水になり 水素と酸素になり ただの宇宙になる 繰り返す宇宙が 宇宙の輪廻が ただ一冊の書物に還る 栞を挟めない書物に還る 書物になれなかった同素体が笑っていた その記憶の断片(かけら)が次の宇宙の綿菓子に飽和する ザアアアア ザアアアア ザアアアア ザアアアア

セベラルノーツ

セベラルノーツ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-25

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