陽炎

青が沸騰しながら揺らめく
足元の光を逆さまにして
頭から着替えるような季節は
道路の幅が良く見えなくなった
カステラの耳を残すくらい
曖昧な境目で歩いている
僕はまるで遠視になって
男と女の落としたボタンが
地面で跳ね返るのを拾えずに
幻のように動かす手のひら
熱気を逃すためにお辞儀する
遅くはないけど早くもない
ビニールハウスの街に
水を撒いたら何が育つのか
少しだけ待つ予定だったのに
両足が側溝で滑ると
愛はもう収穫されたと思った

陽炎

陽炎

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted