洗面所

(わたしのせいにしないでよ) (わたしはワタシのせいにするから) (あなたのことよく知らないから) (あなたのせいにしてきたんだろうな) 起きて確認するのはまず 手垢塗れの携帯電話 こんな矩形のゴミ箱ひとつに 散々振り回されてきたんだね 寝ぼけ眼で通知を見るのは 現実はすこしわたしには刺激が強すぎるから 洗面所で顔を洗っても 心の皮脂は落ちないままだね あなたの貸してくれたCD 聴かずにもうすぐ2年が経つけど わたしほんとは知ってるんだ あなたも実は聴いてないこと 相槌ばかりが得意になって からっぽなヒトになってごめんね きっとなんでもよかったんだ わたしが好きだと言ったものなら あなたが誕生日にくれたどこで買ったかわからないお菓子 こどもじゃないんだから ちょっと呆れたけれど 袋の奥に不恰好な字の手紙が一枚入っていたのを見て お互い素直じゃないなと思って笑った 山手線に攫われるわたしに おとなしく手を振ってくれたね ポエムみたいなInstagramの投稿が 本当のポエムだったらよかったのに 夜にしか詩が書けないあなたのことを ちゃんと叱っておけばよかった 朝に魔法が解けてしまって お菓子も食べずに半年が過ぎた 手に触れられる想い出なんか 想い出なんか虚しいだけだ わたしの知らないところで 器用なあなたを振る舞わないでよ でも ふたりのせいだね あーあ 洗面所で顔を洗っても 心の皮脂は落ちないままだね

洗面所

洗面所

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-24

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