いつかそのふあんがきみの致命傷になる

海百合 海月

 星をかぞえるゆびさきが、赤く、さびしがっている。その赤は、闇のなかで、ぼくを誘いみちびく、ぼくだけの一等星。
 しずかな夜に締まりきらない蛇口の泣き声。不規則な規則正しさで、ぼと、ぽん、ほと、ど、なんどだって響く。締めなおしても締めなおしても、泣きやまないままで。
 朝、だから、なみだは、泣いたということは、その跡は、すっかり隠さなくっちゃいけない。はれぼったいまぶたも、くっきりのこったクマも、はなみずくさい鼻がつまって息ぐるしくても。
 なにものもにげられない圧倒的恒星のひかり。
 すべてをあばかれる瞬間にまた、ひとつ、死んでゆくきみのくらい感情は、行き場がないので、きみの鎖骨のあたりにひっそりねむっている。骨となって。墓標のないそこで、呼吸のいらないねむりについている。
 ぼくは寒さにつよいので、きみのあかりにはなれない。
 一等星は、空の果てに消えて、ついになみだを置き去りにする。

いつかそのふあんがきみの致命傷になる

いつかそのふあんがきみの致命傷になる

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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