いつかそのふあんがきみの致命傷になる
星をかぞえるゆびさきが、赤く、さびしがっている。その赤は、闇のなかで、ぼくを誘いみちびく、ぼくだけの一等星。
しずかな夜に締まりきらない蛇口の泣き声。不規則な規則正しさで、ぼと、ぽん、ほと、ど、なんどだって響く。締めなおしても締めなおしても、泣きやまないままで。
朝、だから、なみだは、泣いたということは、その跡は、すっかり隠さなくっちゃいけない。はれぼったいまぶたも、くっきりのこったクマも、はなみずくさい鼻がつまって息ぐるしくても。
なにものもにげられない圧倒的恒星のひかり。
すべてをあばかれる瞬間にまた、ひとつ、死んでゆくきみのくらい感情は、行き場がないので、きみの鎖骨のあたりにひっそりねむっている。骨となって。墓標のないそこで、呼吸のいらないねむりについている。
ぼくは寒さにつよいので、きみのあかりにはなれない。
一等星は、空の果てに消えて、ついになみだを置き去りにする。
いつかそのふあんがきみの致命傷になる