古希の散歩道/俳句二十首

 

  渡り鴨 この小さな身で よくもまあ


  鴨浮きて 胸なでおろす 岸の池


  一冬を ともに越そうや 渡り鴨


  知らぬ間に 着ては飛び去る 鴨の群れ


  
  春を待つ 桜の園に 古老杖


  暖冬に 夏の暑さが 危ぶまれ


  懐の 寒さを防ぐ 手だてなし


  政りごと 人代わりても 変わりなし


  冷え逝かぬ 花を残して 陽は入りぬ


  老い人を 気遣うものも 老いてゆき


  
  つるし柿 消えし空き家の 戸は風に揺れ


  切り株に 当てのカラスも 困り果て


  入りゆく陽 山の小柿に 色を添え


  木枯らしの 合間をぬって 葉を寄せぬ


  何よこれ 種知らぬ孫に 一苦労


  柿観れば なき故郷の 家想い


  柿赤き 干す稲の田に 煙立ち


  モノクロの 写真の柿の 色や赤き


  柿紅き  あの日の君は いま何処


  柿落ちて  カラスの声の  侘しさよ

古希の散歩道/俳句二十首

古希の散歩道/俳句二十首

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-18

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