眠れぬ森の淑女

悒鬱たちをひきつれて わたしは森にとじこもる 林檎の果実を月にあわせて あなたに体温をあげるの あなたの花言葉は誘惑だって知っているのに わたしがあなたを誘惑してる 寂しいのよ 淫乱だって嗤うかしら 沈魚落雁閉月羞花(ちんぎょらくがんへいげつしゅうか) みんなわたしをそう云うけれど わたしだってセンチメンタルなうたをうたいたいときがある あなたもそうでしょう? その唇で接吻(くちづけ)されたら もっと乱れてしまうかもしれない ごめんなさい きょうだけきょう以外わすれさせて 欠けた指輪でも愛してくれる? 「欠けてるからこそ好きなんじゃない」 あなたのまえで淑女はやめるわ 淫乱だってかまわないわよ だからもうすこし もうすこしだけそばにいさせて 花とまぐわう夢をみさせて 「ずっと夜がつづいたらいいのに」 だれにも受信されないわたしの遺言 儚さに溺れふたりはきえた

眠れぬ森の淑女

眠れぬ森の淑女

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-15

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