「逆鱗の」「オンライン」「寿司」

たつたつ

「逆鱗の」「オンライン」「寿司」

 ガチャリと開錠の音が静かだった廊下に響き渡る。ドアを開けるといつもの自分の家の匂いが身体を包む。
そうして部屋の中へと入り、電気をつけて、鞄を床に下ろす、ここまで来てやっと自分の部屋に帰ってきたという実感がわいてくる。
 そしてすぐに机の上のチラシを数枚手に取り、その中から気分に合った夕食を選び、今日は寿司の気分だったので目的の店へデリバリーの電話をかける。
慣れた動作だと思った。もう、そういうルーティンワークが自分の中に出来上がっている。
 スリープモードになっていたPCを復帰させながら、デスクチェアに腰掛ける。
 この前組直したばかりの愛機は静かに唸り声をあげて、いつもの画面を表示する。
 起動するのは今流行りのオンラインゲーム『シニカルクロニクル』。
 プレイ人口は数十万人ともいわれているが、斜陽コンテンツであるオンラインゲームにそれだけの人数が集うゲームは昨今とても珍しい。
 そんなゲームの中で俺は高位ランカーとして日夜、もう一人の自分を動かし続けている。
今日も狙うのは『逆鱗の欠片』という希少なドロップアイテムだ。
 一日に一度しかリポップ―つまり出現しないボスモンスターを倒すとごく低確率で手に入る。
 これまで多くの人がそれを求めて何度も何度もそのボスモンスターを倒したが、ついぞ入手した人物は現れなかった。
 ネットワークが普及した現在、もしもこんなレアアイテムをゲットできたなら、自慢ツイートくらいは見かけそうなものだが、それすら現れないのだが、その実装すら疑われ、もう誰も狩る人がいないのが現状だ。
 ただ一人、俺を除けば、だが。
ギルドチャットに適当に挨拶文を流しながら、ボスを狩るための装備を整える。
 ボスモンスターが出現するまであと二分を切っている。
 出現するのは辺境の地『ヘリス高原』にある『名無しの湖』。
オンライン上では明け方に当たる、霞がかったその湖の上に徐々にその姿がはっきりと表れてくる。
体長は山を跨ぐともいわれており、その長い胴体を覆う鱗は固く鈍色に輝いている。
この世界に一体しか確認されておらず、そして最強にして最凶の種族である竜種。
何よりも特徴的なのは、顎の下に見える赤い『逆鱗』。
 準備は万端だった、所定通りに行動すれば問題ないはず。そうやって心を落ち着けて剣を構えようとしたとき、頭に強い衝撃が走った。
 痛い、そう思うよりも先に意識が刈り取られて、世界が真っ白になってゆく。
 白の世界の中に見えるのは赤の花火、黄色の閃光、緑の靄。
 心地の良い風を感じた。
目が覚めると、そこには俺の知らない景色が広がっていた。
 「ううっ…」
 身体を起こすと、目の前には広い平原、そして奥にそびえる壮大な山々が飛び込んできた。そのどれもが間違いなく一度も訪れたことがない風景だと自分に伝えていた。
「ここは―」
疑問を口にしようとしたとき、なぜ気が付かなかったのだろう、自身の背後には大きな湖が広がっていた。
そこで初めて自分のいる場所が見たことのある風景と重なった。
「ここは…『名無しの湖』?」
多くの疑問と共に、そうとしか考えられない事実が目の前にあった。
なんたって、目の前には画面の中で何度も退治したあの竜が目の前にいるのだから。

「逆鱗の」「オンライン」「寿司」

「逆鱗の」「オンライン」「寿司」

ランダム(アプリ使用)に選ばれた三題について、原稿用紙3枚(800-1200文字)程度の短編小説。 今回は 「逆鱗の」「オンライン」「寿司」 できるだけ恋愛要素を取り入れられるようにしてます…が、今回はなろうものっぽい…。 40分で原稿用紙4枚になってます。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-01-12

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted