おいしいパンと花と幻想

 花のじゅうたんで、ねむりましょう、あのこは、森のにおいがします。
 ぼくらは、いつまで、星のこどもか、わからないまま、暮らしているなかで、シュトレンが好きな、おばあちゃんも、また、えいえんに、おばあちゃんだった。白いエプロンが、よくにあっている。学校で、せんせいがつかう、あの、おおきな三角定規が、ときどき、好きで、夏のおわりから冬にかけての、プールのうつりかわりを観察していると、なんだか、こころもとない感じになった。
 空の、散れぢれの雲に、手を伸ばしてみて、もちろん届かないって、知っている。
 町でいちばん高い建物である、時計台には、ふらりと天使が舞い降りるだなんて、そんなうわさが、あって、でも、まよなかには、きまぐれに、まよなかにしかあらわれないひとびとも、さまよっていて、天使も、まよなかにしかあらわれないひとびとも、たぶん、みえるひとにしかみえない系の、やつで、ぼくらは、なんだかんだで、四六時中、ねむたい。森のにおいは、つめたい冬の朝のにおいとおなじで、あのこが、花のじゅうたんで、寝返りをうつと、花は、くすぐったそうに、揺れた。おかあさんが、ホームベーカリーでつくる、食パンは、すこしだけ悪魔的、と感想をのべたのは、おとうさんで、ぼくらは、エンゼルフィッシュが泳ぐ水槽を横目に、あたためすぎて熱いコーンスープを、のむ。あのこのはいている、くつしたの刺繍が、なんだかちょっと、のっぺりしたくまの顔であることが、ほほえましい。一日のおわり。

おいしいパンと花と幻想

おいしいパンと花と幻想

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-01-08

CC BY-NC-ND
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