【再録】ゴールデンエイジの物語 001

万田 竜人(まんだ りゅうじん)

001 背中に翼を背負った女神の存在感

ピア赤レンガ桟橋で、クルーズ船に乗り込むと目の前に階段があり乗客は1階と2階、
どちらでも選択できるように、自由席としての設えになっていた。昨日は、強風のため
全便が欠航と聞かされていたので乗船するまでは気がかりであった。

今朝は、風も比較的おだやかに感じられる。
私たちは、1階の前側に席をとり、状況に応じて、2階の甲板に移動することにした。

やがて、船が出港すると、クルーズガイドが登場して、船内アナウンスの始まりである。
船が速力をあげると、最初は横浜港の玄関口を知らせる赤灯台を左手に見てやがて
横浜ベイブリッジの下を抜けて本牧埠頭に向かう。

本牧埠頭の海側からは、ガントリーポイントを目の前で見ることが出来る。
ここで、クルーズガイドのアナウンスも名調子となり、分かりやすい解説口調となる・・・

「今、目の前で船内に自動車を盛んに積み込んでいますが、この大型船には約5千台
の車を積載します。積載効率を考えてドライバーは車同士を約10センチ間隔で並べて
行きます」。

「その卓越した運転技術に敬意を表して彼らは愛称で『ギャング』と呼ばれています」

次に案内されたのは、本牧埠頭に設置された、日本最大規模と云われている最新鋭の
メガコンテナターミナル、目の前では、コンテナがクレーン操作によって巧みに積み込ま
れている。

ここでも、クルーズガイドが登場して解説・・・

「このクレーン操作は、風が吹く中での作業となるため、極めて操作が難しく高度な熟練
が必要とされています」

「操作に当たる技能者は、地上からエレベーターでクレーン操縦席に乗り込み、風を計算
しつくした上で、コンテナを次々と積載して行きます」

「彼らにも愛称があり『ガンマン』と呼ばれています」

そして、クルーズ船は、再び横浜ベイブリッジの下を通り抜けて、ペリーポイントに向かう。
(1854年にペリー率いる黒船艦隊が錨を下ろした場所である)
クルーズ船から陸地を眺めると海から見える海岸の景色が水平に目の前に広がっている。

ペリーは、日本に向けた開国の任務が与えられる1年以上も前の1851年1月に日本遠征
の基本計画を海軍長官に提出しており、その中で、日本に対しては・・・

「日本も中国と同様に、友好関係を訴えるよりも、恐怖に訴えるほうが有効である」
「長崎の地における日本側との交渉についてはオランダなどの妨害が想定される」
など、と、明確な戦略や戦術を具申している。

そして、1853年に、ペリーが日本との交渉の場として選んだ浦賀では、実際に艦上から
数十発の空砲を発射して威嚇行為を行っている。
(勿論、この時、幕府側には事前通告をしている)

ペリー艦隊が、2度目の来日をしたときに、ようやく、幕府がペリーとの交易の交渉を受け
入れ、交渉の場を横浜に設営した。

ペリーは、本牧付近の海域(ペリーポイント)に、投錨、将官や船員など 約500名と共に
横浜村に上陸した。
(時に1854年3月のことである)。

この時、ペリーは日本側から大いなる歓待を受けており、その後の交渉が円滑に進捗した
といわれているので 「横浜港のペリーポイント」 は、日本が米国との交易に向けて重要
な進路を決める、きっかけとなった記念すべき場所であり、浦賀とは、また、違った意味で、
象徴的なポイントの一つとも云える。

その後、ペリーは、和親条約の細則を下田において、全13か条からなる下田条約として
締結、その帰路に立ち寄った琉球王国とも、通商条約を締結、帰国後は、その成果を
「日本遠征記」としてまとめあげて大役を果たしていることから横浜港のペリーポイントは
ペリーにとっても記念すべき場所であったと云える。

やがて、クルーズ船は将来的には、大型客船も停泊できるような工事を進めている湾岸
の近くを通り抜けて、みなとみらい地区の近代的なビル群に近づいて行った。

それぞれのビルについては、建設設計のコンセプトが明確に説明されて楽しかった。

その中でも、ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルは・・・

「海に、浮かぶヨットの白い帆を連想してデザインした」と、云う特徴的な外観からは、
オーストラリアのシドニーの海から見るオペラハウスを脳内で思い浮かべた。

そして、クルーズガイドからのアナウンス・・・

「船内1階のお客様も是非、船室から出て、肉眼でご覧になって下さい」
「これは、クルーズ船だからこそ見える景観です。インターコンチネンタルホテルの
最上部に、背中に翼を背負った女神像を、身近な感じで観ることが出来ます」

「なんという存在感だろう」

実際に、ビル最上部の内壁に翼を背負った女神像を発見して感動、凝視して拝観した。

そして、それを機会に、家内 共々、クルーズ船の2階の甲板に移動することにした。

やがて、クルーズ船は・・・

海上保安庁の船のそばを通り抜けて、ピア赤レンガ桟橋に向かった。
陽射しは暖かく感じられ、今日は「クルーズ日和であった」ことに感謝、桟橋に近づくと
広場では子供たちが楽しそうに遊んでいた。

思わず甲板から手を振ると、手をつないで海に向かって歩いていた母子が、こちらに
向かって手を振ってくれた。

桟橋に船が着いて、船から降りる時に、クルーズガイドさんに・・・

「今日は、楽しいお話をいろいろと、ありがとうございます」と云って、感謝の気持ちを
伝えた。

(続 く)

【再録】ゴールデンエイジの物語 001

【再録】ゴールデンエイジの物語 001

001 背中に翼を背負った女神の存在感・・・

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-01-05

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