昔好きだった高校の同級生が駅のホームを綺麗になった姿で歩いていた

満員電車がストレスではなく淡い高揚感で満たされたときに

満員電車、連絡の多い駅で人は大きく入れ替わる

ふと空になった駅のホームは映画のワンシーンみたいで空虚だ

両隣にスーツが並んで革靴はおおよそ同じ方向を向く

扉が人間の顔色を伺った頃、僕の目は一点を見つめていた

高校2年生の頃だった

あの頃の僕は人との距離感がわからなくなっていた

興味が薄くなっていたのかもしれない

もしくは諦めかけていたのかもしれない

人の心が見えない為に共感・理解は不可能だと

会話をしなければ何も始まらないとわかっていたのに若干18歳で心というものに疲れてしまっていた

5月の教室は机どうしの距離が縮んで会話が増える

ただ増える会話もあれば減る会話もある

君との会話を増やすどころか減らしてしまったのは僕だと思う

右頬に少し大きなホクロがあって笑うと目尻にシワができる

同時にえくぼが出来て口が大きく横に伸びる

背は160ないくらいでバドミントン部だった

目がとても大きくてその茶色い瞳が僕の呼吸を浅くする

ある朝、君は僕に「おはよう」と言ってくれた

僕は自分の気持ちを隠すためにどうすればよいのか必死で考え、ほとんど話をできなかった

それが最初で最後の朝でそれからほとんど話をしなかった

だけど君の笑い声は今でもよく覚えている

人に嫌な気をさせない、でもすっきりした声で、それを聞く度に聴覚が良くなった

ショートボブがその細くて白い首を隠してくれないものかと何度も思った

だけど、数年ぶりに見た君はもっと色鮮やかだった

社会という不安の塊が全く影響していないような、それでいて若かった頃よりも汚れてしまって、それさえも自分の光として取り込んでしまった
ような

明日を求めて今日を散歩する歩き方に

たった5秒の駅のホームが、列車が僕から奪い去った光景が、今でも忘れられない

昔好きだった高校の同級生が駅のホームを綺麗になった姿で歩いていた

昔好きだった高校の同級生が駅のホームを綺麗になった姿で歩いていた

  • 随筆・エッセイ
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更新日
登録日
2020-01-04

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