無表裏の狭間

真夜

プロローグ

暗闇を歩き続けるのは初めてで不思議な感覚だった。

どれほど前に進んでも進んだ感じがしない。

つうか、これは左右判らなければ、前後すらあっているのかさぇも判らない。

……なんだ此処は、自分の姿でさぇも判らないし、回りに何が在るかさえも判らない。そう、これはまるで視界が慣れてない時の感覚と同じだ。ならば慣れる時が来るまで、大人しく立ち止まってでばいい。

目は瞬きしながらでも視界は一点にし、この暗闇に慣れるまで頑張って見たものの結局視界からは何か見えることはなかった。これほど見えないとなると、まるで失明したのではないかっと思ってしまうくらいに。

盲目でこれから生きるとなると、とてつもなく辛い生活を送らないといけないとは、地獄のような日常だな。それなら死んだほうがマシのような気がする。

死を迎えるのをこれから盲目で待ち続けるという事が思考に巡り回る。

頭を抱えるような考え事をしていると、それは突如、奇跡とも言える一筋の光がこの暗闇に射し込んできた。

射し込んだ一筋の光の方へ向かうと余りにも眩しさに視界がやられるの片手で塞ぎながら前へと進む。

「ぅ……」

 光の中に入出たのだろうか、今さっきまで使えなかった五感がはっきりとする。

光が射し込むまで何も見えなかった視覚に、光の中へと入った瞬間に何も聞こえなかった聴覚は今では風の音や水の音が聴こえ、香りを感じることなかった嗅覚も、何も感じることなかった触覚も今では冷たさや風が肌に伝わり、生きているという実感を得ているような気がした。

にしても、ここは何処だ。暗闇の次は湖に立っているようだが。

つうか、この湖は何故にこんなに赤いんだ。ていうか、空も赤いし。

「ん?」

赤い風景を呆然と眺めながら回りをみると湖に浸かっている髪の長い少女であろう後ろ姿を見つけた。

その少女であろう所に不自由な足でそこに向かった。

水の音に気づいたのか、少女はこちらに振り向いた。

「……」

「……」

お互い無言。ただお互いの視線だけはぶつかっている。まるでお互い様子を伺っているかのように。

と、普通はそう思うであろうが、たぶんそれは思うのは少女だけであろう。

オレはというと、その少女の姿に見惚れていた。

艶やかな黒髪、小柄で、白く透き通った肌、そしてオレを映す紅い瞳。幼い少女にしては、それはとても美しく、この世界でたった一輪の花のような、そんな感じ。

「貴方は誰?」

少女の裸に見惚れて呆然と立ち尽くしていると、少女からそう質問された。

「オレは……」

「……」

「……あれっ?」

自分の名前を少女に教えようとするが、何故か自分の名前が思い浮かばない。

なんで自分の名前が出てこないんだ。

頭を抱えて少女から水の方に視線を落とす。

「えっ?」

水の中に映り込んだ自分の姿に疑問を抱いた。

「誰だ……こいつ?」

その姿は全く縁も所縁もない他人だった。というより自分の姿でさえ思い出せない。まるでこれは────。

「あぁ……あっ……」

突然肌寒くなってきた。あたりまえだ。こんな冷たい風にあたり、冷たい水の中に浸かっていると身体も冷えてしまい、震えが止まらなくなってしまう。

「……」

そんなオレの状態を黙々と見る少女はオレの方へ近寄ってきた。

「どうやらあなたは、この世界に居ていい存在ではないみたい」

少女はオレの顔を両手で挟み持ち、少女の顔の方へ近づけていった。

「いいわ。私があなたを助けてあげる」

オレは少女が何を言っているかを理解出来ず、少女の紅い瞳に惹かれていたが、何故か視界は霞始めて暗くなった。

無表裏の狭間

無表裏の狭間

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青年向け
更新日
登録日 2019-12-26

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