宇宙人二世 マリア

宇宙人との遭遇から物語は動き出す

第一章 飛行物体

 二千二十二年七月七日の事だ。東野佐希子(とうのさきこ)二十七才は十日間の休暇を取り一人で旅をしていた。現在、佐希子は東京の奥多摩に住んで居る。そこから愛車ランドクルーザーに乗って首都高から東関東道を抜け潮来から鹿島灘を右に茨城の大洗港に到着。大洗からフエリーで十八時間掛けて苫小牧港へ、そこから室蘭にある地球岬を訪れていた。今から一千万年前の火山活動で出来た高さ百メートル前後の断崖絶壁が十四キロも続く観光名所でもある。
 空は夕焼けからやがて日が沈み、もう上空は星が見え始めていた。天の川を撮ろうと佐希子は高感度カメラをセットし星空を眺めていた。その時だった。上空で見た事もない強い光を放ち、飛行物体が飛んで来た。流れ星かいやそれにしてはおかしい。その飛行物体が近づいて来る。しかも佐希子に狙いを定めたように飛来してくる。そのまま地面に衝突かと思ったら急激にスピードを落とし、そのままフワリと浮かび制止した。UFOか? 良く分からないが謎の飛行物体だ。佐希子の目の前に音もなく着地した。大きさは大型トラック程の大きさで長方形だ。まさか宇宙船? UFOなら円盤型と思ったら細長い。驚いた佐希子はカメラと三脚を持って逃げようとしたが腰が抜けて動けなくなった。
『宇宙人が地球の人間を誘拐しに来たのか? 私が一番先に狙われたのだろうか。それなら北朝鮮の拉致より質が悪い。宇宙の彼方に連れて行かれ解剖されるかも冗談じゃない。私を誘拐したら国際問題だぞと訴えても相手が宇宙人では国際法も関係ないのか』
 佐希子は意味もなくほざく。暫くすると長方形の飛行物体の横扉が開き、誰かが一人だけ出て来た。宇宙人? 佐希子が思わず口に出した。
「あっ私を捕まえに来たのね。きっと私が美し過ぎるから狙ったね。私だって負けてないわよ。学生時代柔道やっていたんだから投げ飛ばすぞ。寄るな! 蛸! 私は蛸が嫌いだ」

 宇宙人なら蛸のような生き物が出てくるかと勝手に思っていたが、それは人間の姿をしていた。何故かフラフラと出て来た。大きな旅行カバンのような物を引き摺っている。
「蛸じゃない。宇宙人でもない? では宇宙飛行士? まさかこんな場所に着陸する筈がない。とにかくそれ以上そばに来ないで。本当は柔道、……そう空手もわやっていたのよ」
本当に空手はやっていないが多い方が良いと思った。
 佐希子はパニックになっていた。宇宙人に柔道が通用すると思いないし言葉通じるはずもない。 その謎の人間みたい宇宙人に、子犬が吠えるように佐希子は吠え捲くったが怖くて動けず倒れこんだ。だが佐希子の前で勝手に相手が倒れた。柔道技で投げ飛ばしても居ないのに? 襲ってくるのじゃなく相手が勝手に倒れた。弱っている者を見過ごし訳にも行かない。しかしどう見ても人間のようだ。年齢は三十歳くらいか。人間と分かった以上安心すると、佐希子はやっと起き上がる事が出来た。

「もしもし大丈夫ですか? 私の美貌に目まいがしたの? ……そんな訳ないか」
 どう見ても東洋人には見えない。西洋人なのか分からない。しかし男である事は間違いない。男はキャリアバックのようなケースを開け金属製の注射器のような物を取り出し、それを首に当てると赤い光を放った。暫くするとフーと溜め息を漏らした。なんと! しっかりした日本語でこう話した。 
「驚かせてすまん。君に危害を加えるものではない。安心してくれ」
「…………」
 安心しろと言われても得体の知れない人物、そして奇妙な形をした飛行物体から出て来た者に警戒せざるを得なかった。
「貴方は地球の人……それとも宇宙から来た人? 他の人も居るでしょう何故出て来ないの」
「訳は言えないが地球を調査に来た。私はアルタイル星から来た。アルタイル星は日本では彦星と呼ばれ、ベガ星は織姫星と言われているようだが。その調査船の乗組員だ。どうやら地球の細菌にやられたようだ。幸い他の乗組員は感染していなく無事だが、自分だけが地球の細菌に感染したようだ。このままで一緒に乗れば全員が感染する。仕方なく私だけが船から降りる事になった。他の者は、まもなく地球を離れ離陸する。私は細菌に感染し仲間ともう一緒に帰る事は出来ない。だから一人地球に残るように指令を受けた。助けて欲しい」
 そう言葉を発すると同時にその宇宙船は音もなく浮かびあがり、やがて星空の彼方に消えて行った。どうやら見捨てられようだ。無理に連れて帰れば全員感染し全滅する仕方がない処置なのだろう。
「ちょっと! ちょっと待って。アルタイル星人って人間じゃなく宇宙人のこと。それで……私にどうしろと?」
「もう私は、私の星に帰る事は出来ない。あの飛行船も二度と地球には立ち寄らないだろう。だから私はこの地球という星で死ぬか生きて行くしかないのだ。ちなみに私をドリューンと呼んでくれ」
「でも地球の細菌にやられたのでしょう。私は医者じゃないし助ける事は出来ないわ」

つづく

宇宙人二世 マリア

宇宙人二世 マリア

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-12-24

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted