夢の描写 舌たち
一人の男が医者に呼び出される。病気のことがばれたかと思い男は焦るが、医者はおもむろにベッドの上へテーブルクロスを広げ男を朝食へ誘う。
「素晴らしいでしょうこのスープ。家内が朝一番に作ったのです。」そういって医者がすすめるスープにはなぜか人間の舌が浮かんでいる。男は気味悪がり、スープをこっそり床へ捨てる。
そんなことには目もくれず医者は朝食のすばらしさを語り続ける。そのぺちゃくちゃと動く舌をみるうちに男は自分の舌に違和感を覚える。こっそりとふれて見ると、そこに舌が無い。
足元をのぞいてみるとベッドの下で舌がスープに入っていた舌とダンスを踊っているのが見える。馬鹿なことはよせと呼び戻すのだが一向に戻る気配はない。むしろさかりがついたようにダンスはさらに情熱的なものとなっていく。男にそれを止めることはできない。ふと男は相手の舌に見覚えがあることに気が付く。
顔をあげると医者が心底軽蔑しきった眼で男のことを眺めている。
「まったく!気づいてないとでも思っていたのかね」
そういうと医者は黒光りする革靴で踊り狂う舌たちを踏み潰す。そして男はもう二度と話すことが出来ない。
夢の描写 舌たち