神様ものがたり。~ハルヲサガシテ~
※本文は、《神様ものがたり。》に出てくる勇者にスポットをあてて書いたものです。
スペース上書ききれない部分がどうしても出てきますが、ご了承ください。
「すみませんー誰かいませんか?……こんにちはー」
暗い洞窟のなかを、時計のわずかの光で進む。(こんなところ、来るべきじゃなかった。)自分の意思でここに来たが、いまになっては少しこわい。何か起こるかわからないからだ。
僕が住むこの零祭町には、古くから伝わる伝説がある。町の西方にある森で【春】を見つけ、それを神社で一年間供養すると、町に幸運が訪れると。僕はそんなおとぎ話みたいなものを信じてなかったが、たまたま【春】を探す順番が僕のクラスに回ってきただけだ。なにせ過去の資料を研究した末、【春】を一番見つけやすいのは零祭第二中学校の生徒だという結果がある。かつては町内会の人たちがずっとこの係だったが、十四年前ぐらいから零祭第二中学校の生徒が順番に担当するようになったと。クラスのなかで話し合って決めるということに至ったが、ワケあって僕は自分から「やりたい」立候補した。
【春】を見つけること自体は難しくないようだが、いろいろと不可思議なことも起こっているらしい。【春】は届いたのに見つけた本人がいないなんてことはしょっちゅうあるという。恐怖もあるが、それよりもいまの僕は好奇心でいっぱいだ。今年の【春】は、この洞窟にある。なぜわかったかというと……勘だ。
「ぅおっ、危なっ」
しばらく進むと、急に目の前の道が消えた。周りを見渡すと、大きな空間がそこにあるようだ。(どうしよう……これじゃ前に進めない)あきらめたくはなかった、だけどよく見えないし、どこかから来た風も強い。僕は立ち尽くしていた。
『…自然に身をまかせて……』
(え?な、に?)声が聞こえた、女の子の声だ。…おかしい。ここには誰もいないはずだ。
『大丈夫…ワタシは貴方の味方よ……』
「味方?君は、何処にいるの?」
声は答えた。『……下よ』
「下?!」
確かに、僕の目の前の空間は広々としている。覗いてみたが、どこまで続くのか、見当がつかない。
「無理だよ…そんな」
『飛び降りて』
(って言われてもっ、無理なものは無理!)
僕がもじもじしていると、突風が吹いた。
「うわぁあああァ~」
僕は、下へ下へと落ちていく……
「っ!」
いつの間にか意識がとんだみたいで、目を開けると、女の子がいた。年齢は…僕と同じくらいか、少し下。博物館でしか見たことのない昔の日本の民族衣装を着ていた。
「驚かせちゃった?ごめんね。貴方が必要なの」
「へ?」
「ワタシは歌(か)宵(よ)、はじめまして。貴方は名前を言わなくてもいいわ、後々面倒なことになるだけだから。ついてきて」
「あ、あぁ。」
展開が速かったのでよく分からないが、変な人だ。(僕になにかしてほしいのか?)そんなことより、はやく【春】を見つけないと……
「うぉ!なにここ!すごーい!」
一面に広がるお花畑。春はまだきていないが、ここの花たちは満開だ。……さっそく、不可思議なこと発見っ。
「そうだ、手伝ってくれた御礼に、この花たちをひとつ持って帰ってもいいよ。お探しなんでしょう?」
「ありがと!でも、なんでわかったの?」
「ワタシだってこの町に生まれたわ」
ちょっと説得力ないように思えた。歌宵さんはかなり西洋っぽい顔立ちだった。
「僕はなにをすればいい?」
「なにもしなくていいわ。この町の話をしてあげる。」
花園の中央に、ちょうど二人が坐れるベンチがあった。ベンチに腰掛け、歌宵さんは昔話を始めた。
――(*・ω・)ノ●○●省略しまーす●○●――
「……ハルはここに閉じ込められ、他の人は消滅した。話は終わりよ。感想は?」
「それで世界は平和になるんじゃないの?」
「そうだといいけど、でもそれじゃ世界に影響を与える人が誰もいなくなる。そうすると世界は廻らなくなるわ。」
「だから…」
「そう。……ごめんね」
(歌宵さん?)首になにかがささって、僕は再び意識を無くした。
「ごめんね…だけど、しかたがないの。お願い、ハルを探して――」
本当の意味での、『ハルヲサガシテ』。
僕はその恐ろしさを知らなかった……
神様ものがたり。~ハルヲサガシテ~