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夢光

押入れの奥、暗い隅に立てかけるよう置かれた分厚く大きな本の、薄暗い赤色の表紙には、黄金色で、大きく文字が刺繍されているようだった。
私はその黄金色を見るなり、部屋の片づけ中にも関わらず少々固まってしまった。その大きな本は、私の通っていた夢光中学校の、卒業アルバムであった。静かな部屋に、時計のチク、タクという音が鳴り響く中、私は、まるでネズミを見つけたネコのように、狙いを定め、右手を押入れに突っ込み、無我夢中でそのアルバムに手を伸ばした。
アルバムを攫んだ手をたぐり寄せ、私の元へと持ってくる。その表紙には、黄金色の色褪せた刺繍で大きく、夢光中学校という文字が記されていた。その本はひどく埃被っていた。私はそれを物置から取り出し、テーブルの上まで運んだ。手でさっと埃を払いのけ、表紙をめくった。
見開きには、『3年A組』と黒板に大きく書かれた写真と、その黒板の前で20人が、丁寧に並んでいる写真が大きく印刷されている。ほかにも、委員会や部活動の写真、運動会や修学旅行の写真など、色々な場面の写真がある。普段の授業風景を撮ったであろう写真には、18人の生徒が背筋を伸ばし黒板を見つめる中、最後列で隣の子と一緒に、小さく、カメラ目線でピースをする私が写っていた。
本の最後の、真っ白であったはずの二ページには、十九の文章と、多種多様なラクガキが描かれていた。
そして、手のひらほどの褪せた写真が一枚、挟まっていた。
その写真は、校舎の前で、7人の男を写している。その真ん中には私が立っており、私も彼らも、みな笑っている。そして片手にピースサインと、もう一方に金色の刺繍のされた分厚く大きな本を持っている。

私も彼らも、みな笑っている。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-12-22

Copyrighted
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