三題噺「ティータイム」「魚」「サンドイッチ」
紅茶の中に魚が泳いでいた。
落ち着け。そんなことがあるわけがない。
もう一度ティーカップの中を覗き込んでみる。
いた。幻ではない。
どうしてこうなったんだ。
私は数分前のことを思い出してみる。
数分前、すなわち今日のことだ。
私はいつものように自宅の庭でティータイムを迎えていた。
日当たりの良い場所を選んでレジャーシートを敷き、ランチボックスを脇に置き、私は紅茶を入れるために魔法瓶の蓋を開けた。
魔法瓶からは紅茶と魚が出てきた。
いや、待て。
どうしてそこで魚が出てくるんだ。
私は紅茶を魚ごと捨てた。
ふう、どうやら私は疲れているようだ。
でなければ魔法瓶から魚が出てくるわけがない。
きっと何かの拍子に魚が紛れ込んだのだろう。
ないとは言い切れないからきっとあったのだ。
そう自分に言い聞かせると私は再び魔法瓶の蓋を開けた。
良い香りだ。やはり紅茶はこうでなくては。
とその時、魔法瓶から魚が飛び出して私の顔に当たった。
魚は再び魔法瓶の中に戻っていった。
そして、それと同時に魚アレルギーの私は気を失った。
目が覚めると日が暮れていた。
脇には蓋の開いた魔法瓶が空っぽのまま倒れて転がっていた。
そこに魚の姿はなかった。
そうか、いつの間にか私は夢を見ていたのか。
現実でなくて良かった。
すると安心したせいかお腹が空腹を知らせてきた。
そういえばまだお昼を食べていなかったな。
私はいそいそとランチボックスを開けた。
今日の昼食は卵サンドとハムレタスサンドだ。
どちらも私の大好物だ。
と、そこで私は気付いてしまった。
サンドイッチの中に魚が泳いでいることに。
三題噺「ティータイム」「魚」「サンドイッチ」