私達の街
「鍵、開いてるよ」
吹く風は雪混じりで、肌を冷たく切り裂くかのようです。
「私ここに来るの初めて」
普段は鍵のかかった学校の屋上。
その日は何故か開いていました。
「あれってSちゃんの家だよね」
Sちゃんは何も答えずただ微笑を浮かべながら私を見ました。
「少し高さが変わるだけで見える景色が全然違うね」
教室から見える孤立した世界。
どこか窮屈そうな町並み。
でもその場所は違いました。
私達は広い世界の中で、確かに存在していたのです。
「寒いね、戻ろっか」
Sちゃんは少し考えながら、私の肩に頭を預けます。
『ここから眺めてるとさ、街が全部私達のものになった気がしてくる』
「やっぱりもう少し、ここにいよっか」
私達の街