私達の街

「鍵、開いてるよ」

吹く風は雪混じりで、肌を冷たく切り裂くかのようです。

「私ここに来るの初めて」

普段は鍵のかかった学校の屋上。

その日は何故か開いていました。

「あれってSちゃんの家だよね」

Sちゃんは何も答えずただ微笑を浮かべながら私を見ました。

「少し高さが変わるだけで見える景色が全然違うね」

教室から見える孤立した世界。

どこか窮屈そうな町並み。

でもその場所は違いました。

私達は広い世界の中で、確かに存在していたのです。

「寒いね、戻ろっか」

Sちゃんは少し考えながら、私の肩に頭を預けます。

『ここから眺めてるとさ、街が全部私達のものになった気がしてくる』



「やっぱりもう少し、ここにいよっか」

私達の街

私達の街

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-12-22

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