棺と慾動

渡逢 遥

茲は 四角い 白い 部屋

貴女が 其所に みえました

私は 其所へ 往きました

螺旋の やうに 手脚 こもごも

一心不乱に 絡めて 居ました

私は 唯唯 そこはかとない

孤寂と 貪慾とに 支配され

貴女の 靱やか いと靱やかな

輪郭 只管 なぞつて 居ました

聲の ひとつも 其所には 響かず

温い 吐息が 頸(くび)を 項(うなじ)を

じつとり じつとり 擽る ばかり

嗟 何故 何故だ 如何して おまえは

如何して おまえの 髪は 馨しい!

その肩 指先 背中に 掌

臀 甲 爪先 蹠(あしのうら)

総てが 儚い 如何して儚い!

この儘 かうして ともに 逝きたい!

私は 貴女で 満たされたくない

私が 貴女を 貴女の顔を

綻ばせ 悦ばせたいが 為に

私は この 何も無い 世界で

神よ 一体 如何したら 好い...

彼女に 生命を 吹き込みたいのに

彼女に 生命を 吹き込みたいのに!

おしへて ください あたへて ください

我等に 寂寞 熔かす 讃歌を!

嗟 それにしても それにしてもだ

如何して おまえの 髪は 馨しい!

棺と慾動

棺と慾動

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-12-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted