濡れた空
熱を出し、机に伏していた少女は連鎖する夢を見た。途切れることのない夢。いくつもの世界を連続的に駆け回る少女。高熱は止まらない。それでも少女は夢を見ていた。
小さな球に押し込められた記憶たち。誰もが新たなる光を期待して、空が割られる瞬間を待ち望んでいる……こんなに悲しいことはないのに!空が割れた直後、私たちは宇宙からの過剰な愛に押し潰されて死ぬ運命だ。息が乱れる。手帳を開く手が震える。
──腹を切り裂いてお前の美しい内臓を見せろ
腹を切り裂いてお前の美しい内臓を見せろ──
誰が書いたかも分からない、こんな走り書きが一体何の役に立つ?私の動揺がこの乱雑な文字たちに見透かされているようで、気分が悪い。時間が必要だ。私がこの小さくて窮屈な、夢見勝ちな空間の中で心の平穏を取り戻すまでの時間。不安定な心持ちでは遺書など書けない。空が揺れるまでに私は遺書を書き上げなければならない。
私の、私だけの空を揺らす者。海を求める者だ。凍り付いた海を割る者……。あってはならない。腹部に激痛が走る。私と、私の世界の英雄はどこにいる。内側の痛みを知る者はどこにいる?ひどく濡れた私の遺書。届かぬ声。頭を巡る妙案。
高熱で死亡した、哀れな少女の遺書が読み上げられる。
──揺れる空は美しい
揺れる空こそ美しい
そして轟音と共に割れる空……愛するべき宇宙の姿──
濡れた空