シヴァとメシア
これちか
交換日記をしている天野君と、
置いてきた冬至をすごくすごく心配している結の、
ちょっとした談義。
修学旅行初日の夜
「ゆっいちゃーん、一緒にお風呂はいろー!」
「…」
「城善寺、藤原が困ってるじゃないか、察してあげてよ」
何故に、この部屋割り。
天野、城善寺、俺の3人部屋。
廊下側から天野、城善寺、俺の順で寝ることになったのだが。
「うっはは、結ちゃんを夜中襲っちゃおう」
「…」
「城善寺、藤原が困ってるじゃないか、察してあげてよ」
2年8組と、2年7組は逆ルートである。
8組の俺たちと、7組の藤堂。
この5日間で1時間だけ、7組と居場所がかぶるところがある。
そこで城善寺と藤堂を逢わせてやろうとは思っているけれど、
そこまで俺が持つか分からない。
「あ、すごいすごい」
「?」
「ルームサービスの冷蔵庫、お酒入ってるよ、学生だってのにね」
天野がそんなことを言うものだから、城善寺が面白がってカクテルを飲んでしまった。
勿論、ぐでんぐでんである。
「おとなしくなったね」
「…天野」
「はい?」
「…」
お前はビール派か、と呟いた。
さっきから見ていて、既に4本目を開けている。
「全然酔えないんだよね、家でも土曜日の夜は飲んじゃうんだけどさ、
好きなのはサッポロビールかな」
「…そうか」
「そういう藤原は日本酒派か、似合うな」
「…うちは酒造だし」
「そうだったね、一ノ瀬の家と同じだって聞いたことあったな。…あ、藤原、携帯鳴ってる」
「…」
液晶に、冬至、と出る。
「…冬至、今どこ」
無事に家に帰れたのかどうかを知りたかった。
「…好きだ」
そういう電話の流れを天野に全部見られているけれど、まあ、いいか。
電話を切られてしまって不服そうにしていると、
「ラブコールとはね、中村もやるね」
と天野に笑われてしまった。
「かくいう僕もね、電話してみようかなとは思ってて」
「誰に」
「うん、その、彼氏に」
「?」
「構うなーって怒られること満載なんだけど、でも気になるしね。
ちょっと廊下でかけてくるよ」
「うん」
天野が言う、『彼氏』とは、まあ恐らくだけれど、交換日記の相手だ。
一体誰とやっているんだろう???
シヴァとメシア
天野君はその後冷蔵庫の中のビールを全部飲み干し、
日本酒は結が飲み干し、
カクテルはふたりで半分こ、
と言った具合に、酒を飲んで飲み明かしたふたりは、
もはやお友達以上ですね。