よるのシネマ

あおい はる

 映画館のかたすみから、のぞいた世界のすきまに、きょういちにちぶんのかなしみを、ながして。
 あの、星になりたいと、思ったことはない。
 きみは、えいえんに枯れない花となり、つめたいガラスケースのなかでいっしょうをすごすことがきまっている。
 泣きながら吐きたかった、社会、なんたるものに対する、罵詈雑言を、ただ吐き出すばかりではむなしいから、綿にくるむとする。
 くらやみにはいつも、やさしさがひそんでいて、そっと、わたしのあたまを撫でてくれる。
 よる。
 ねこのかたちをした、おきものが、喫茶店の窓際にいて、雨が降ってきたみたいに、びしょびしょに濡れた頬を、痛くなるまでこすった。スクリーンにうつる、映画のなかの風景に、デジャヴ、を感じたときの、左手小指の感覚は、あまくてあたたかいやわらかなものがまとわりついたときのものに近い。
 キャラメルポップコーンがセイギみたいなところは、あって、あさがくれば、みんな、あたらしい一日をむかえられるでしょう、的な神さまが、わたしたちを眠らそうとする。
 だれも、あさやけに、好きなひとのことを祈らなかった。

よるのシネマ

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-12-12

CC BY-NC-ND
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