メシア篇其の4

これちかうじょう

  1. 5月29日(月)
  2. 5月30日(火)
  3. 5月31日(水)
  4. 5月31日(水)放課後、書道部部室にて
  5. 6月1日(木)生徒監査、極道生徒会たる所以
  6. 6月1日(木)猪瀬家にて

5月29日(月)からの交換日記と、
そしてアーユルヴェーダでもありました、
夏服へのチェンジが待っています。

5月29日(月)

大地へ

この前の金曜日はびっくりしました。
結構、恥ずかしかったんだけれど、君はどうなのかな。
ああいうの、人前で普通にできるってのは、
どうなのかな。

そもそも、この交換日記も、何が目的なんだろうかと僕は思ってしまいます。
大地のことをよく知るためにはいいかなと思いましたが、
結局のところ、
その点がなあなあになっているんじゃないかなと思います。
その真意を僕は知りたい。
君が何を考えているのかを、僕は知りたいと願います。

もうすぐ中間テストと衣替えですね。
テスト、頑張って。
夏服になったら何処かに行くというのは、
ちょっと保留にしましょう。

天野真咲

5月30日(火)

真咲へ

交換日記の真意?
それはもうもちろん、俺のことを知ってもらうためだよ。
そして思い出してもらうための、序章にすぎない。
俺が何を考えているのか知りたいってあったけど、
それは本気?
本気じゃなかったらこの日記をやめてもいいんだよ。

それとね、真咲には俺を好きになってもらいたいんだ。
これはマジな話だよ。
真面目な、クソ真面目な話。

それと、真咲には初等部からずっと一緒の友達がいるよね。
学部は今は違うけど、中等部でも仲良くしてた人、いるよね。
その人のこと、聞きたいな。
そうだよ、名前を出せば『高瀬先輩』だよ。
ちょっと気になる先輩だから、友達から見ての高瀬先輩を、
俺は知りたいんだけどな。

猪瀬大地

追伸

明日、中間テストだからちょっと頑張るよ。
ちょっと、だけどね。

5月31日(水)

大地へ

中間テスト、無事終わりました。
手抜きはしなかったから、まあ、満足かな。
あとは点数に任せる。

高瀬のこと?
それはもう友達だけれど、別段何も説明することないような…。
放送部の副部長ってのは知ってるよね?
式典の司会はみんな高瀬がやってる。
部長の一ノ瀬は殆ど台本書きに忙しいしね。

他に…高瀬のことで僕が何か言えることがあるとしたら、
身長?かな?
僕は180センチだけど、彼は177センチだよ。
でもちょっと痩せすぎてる気がするかな。
そうだ、初等部時代からかなあ、
パソコンがすごく好きなんだって言ってたよ。
話によれば、自分の部屋に6台パソコンがあるんだそうだよ。
そんなに持ってて何に使うんだろうって思うけれど、
本人は当たり前みたいな顔してるから、
…ああそうだ、高瀬は情報科学部の首席生徒ってのも言っておこうか。
でも昔から勉強はからっきし駄目だったんだよね、
よく僕が教えていたっけ。
情報技術の授業では右に出る者はいないけれど、
そのほかはどうかな…。

まあ、そんなところです。

高瀬に興味があるのかな?
でも残念、高瀬は付き合ってる人、いるみたいだよ。

天野真咲

5月31日(水)放課後、書道部部室にて

「テスト中はお疲れさまでしたー」
「明日から普通に活動を始めます、猪瀬君はちゃんと聞いててね」
「…はいはい」
書道部、構成員。
女子、21名、男子、1名。
現部長、総合進学部3年の吹上さゆり。
現副部長、総合進学部3年の西城里奈。

女子21名中、15名が総合進学部の女子で、他6名が総合女子部の女子。
男子1名とは猪瀬大地のことであり、
総合進学部1年5組の生徒。

「というわけで、中間テストお疲れ様でした。今日集まってもらったのは、来月のコンクールについて、
 代表者を発表したかったからです。テスト中に顧問の古関先生が考えてくれました」
「うそ、まじー」
「勿論、エースである猪瀬君は本命で一押しだって!よかったじゃんね!」
「…はいはい」
「それから、3年から吹上と西城、後藤が出ます。2年からは都筑と蛭間、越渡。1年は猪瀬君と野坂、野宮が出ます」
別にそんな報告みたいなの、今日じゃなくたっていいのに。
と俺は頬杖をついている。
ったく、女子連中はわいわいうるせえの。
「じゃあ古関先生が来るまでちょこっと待機ー」
「…」
何だ、来るのか、先生。

古関先生というのは、総合進学部1年7組の担任を務めている先生だ。
古関冬馬。
そういう名前。

他に写真部の顧問もやってたり、生徒会の顧問もやってたりするから、
あなどれない先生だ。

「やあ、みんな揃ってるみたいだね」
部室のドアがノックされ、古関先生が入ってきた。
と同時に俺にウインクする。
きしょ。

「代表の人は一層、努力してくれな。それから猪瀬は男子1人ってことで寂しいかもだけど、
 内閣総理大臣賞はばっちり、取ってくるように」
「はいはい」
「はいは1回でいいよ猪瀬」
「はーい」
せっかくテストも終わったのに、明日から夏服なのに。
そうだ、今日は5月31日。
柳瀬橋の誕生日だったよな。
確か中村がおめでとうって言ってたし。
俺もお祝いしてあげればよかったかな。

「じゃあ解散して。それと猪瀬は職員室まで来てね」
「はーい」
並んで歩く。
いつもの風景、いつもの歩幅。

「随分と楽しそうにしてるね、保健室で」
「柳瀬橋が遊んでくれるんですよ」
「それはそれは、あんな綺麗な子と遊んでるんだ?」
「俺、今下克上志してまして」
「下克上?恐ろしいね、その言い方」
「それより冬馬、もうあれないよ」
「はいはい、じゃあ後でもってく」

6月1日(木)生徒監査、極道生徒会たる所以

「マイクチェック、マイクチェック」
ぽむぽむ、とマイク叩いてみる。
大丈夫だ、ちゃんと電源は入っている。

「じゃあ藤堂、頼むよ」
「はーい」

1年は僕、2年は藤堂、3年は橘が担当することになった、生徒監査。
単なる持ち物検査や身体チェックじゃない。
時には厳しくいかなければ、生徒会の威厳が保たれない。

「1年生は初めての夏服です、冬服とは違って開放的になっていると思いますが、
 これまで通り、制服の着方などは指導に値する人にはしていきますので、
 甘く考えないでくださいね」

裾が長いもの、スカート丈が短いもの、袖の長さが規定範囲外のもの、
といった具合に僕がチェックしていく。
そこで目に入ったのが中村であり、
藤原から聞いてた通り、ちゃんとリストバンドしていたので、
ちょっとほほえましくなる。

「はい君は名前」
「中村です、中村冬至」
「うーん、すごいね、模範的だ。さすがは藤原の助言付きだね」
「あの、天野先輩」
「何?」
「これ…リストバンドなんですけど、つけてていいんですか?」
「ああそれは大丈夫。テニス部の人間もつけてる人いるし、それに」
それに、藤原のマーキングみたいなものだからなあ。
と頭を掻く。
「じゃあ次の人ー」
何か言いたそうな中村を差し置いて、僕は次の生徒のもとへ。

「次が1年5組か」
ちょっと気恥ずかしいなと思うけれど、整列している後輩の前に立つ。
でも、あれ?と思ってしまう。
大地がいない。

6月1日(木)猪瀬家にて

「…」
駄目だ、薬が回ってる。
帰ってきちゃった。
真咲の指導、受けたかったけど、帰ってきちゃった。

「…」
雨が降らないよ。
交換日記、もう、続きが書けないよ。
ちょっとだけ、お休みさせて。

真咲へ

ちょっと、ごめん。
ごめんね、ごめんね、ごめんね。

俺、また、同じこと、しちゃった。

猪瀬大地

メシア篇其の4

出てきました、古関冬馬先生。
1年7組の先生です。
橘の担任の先生ですが、くせ者です。
大地と冬馬はどこかでつながっているようですね。
どういった繋がりなのかは、今はまだ。

そして交換日記、途切れました。
それがどう、真咲に通じるのかは、
これから先の話で。

メシア篇其の4

5月29日(月)からの交換日記と、 そしてアーユルヴェーダでもありました、 夏服へのチェンジが待っています。

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