葵ちゃんの物語

Shino Nishikawa

葵ちゃんの物語

謎が解けるたび、秘密が崩れていく

葵ちゃんの物語
27才の葵ちゃんは、ハジアという大都市に住んでいました。その頃のハジアでは、結婚が何より大切で、みんな急いで結婚していました。確かに、結婚は大切な事です。でも、相手を無理に見つける事はいけません。いつか大切な人と結ばれる事を神様にお祈りするのが良いのです。

葵ちゃんは、ハジアでかっこいい大人になりたかったので、結婚をしたくありませんでした。27才の女性で、ハジアで独身だったのが、なんと葵ちゃんだけだったのです。
葵ちゃんは嫉妬されるようになりました。
そして、葵ちゃんは、いじわるな友達に旅行に誘われ、事故にあわされたのです。
なんとか一命をとりとめましたが、葵ちゃんは、一生重い障害が残ってしまいました。

ハジアという大都市が大好きな葵ちゃんでしたが、今は一人でトイレに行く事もできません。実家で両親と、お兄さんの家族と一緒に暮らす事になりました。
葵ちゃんは最初のうちは泣きました。体が動かない事はもちろんですが、両親は明るい色の服ばかり買ってくるのが嫌だったのです。葵ちゃんは、ハジアで来ていたような紺のスーツや黒い服が着たいと思いました。
それでも、お兄さんの子供である志穂ちゃんと明菜ちゃんの声を聞くうちに、だんだん元気になりました。
葵ちゃんの事が好きだった男の人も、葵ちゃんのために祈り、葵ちゃんは30才までの命と言われていましたが、寿命はどんどん延びました。
葵ちゃんは、週に何度かデーサービスに行き、それ以外の時間は、絵を描いたり、本を読んだり、勉強をして過ごしました。
葵ちゃんが40才の時、志穂ちゃんが、ハジアの専門学校に進学する事になりました。
でも、優しい葵ちゃんは何も言いません。
志穂ちゃんは、ハジアで2年過ごすと、葵ちゃんが暮らす家に戻ってきました。

しかし、今度は、明菜ちゃんが、ハジアに行く事になってしまいました。
志穂ちゃんは、葵ちゃんに美味しい料理を作って喜ばせましたが、明菜ちゃんは何年たっても、ハジアから戻りませんでした。
葵ちゃんの命は、何度寿命を迎えても、どんどん伸びていきました。もう一度、明菜ちゃんと一緒に暮らしたかったのです。

しかし、葵ちゃんの体は悪くなる一方です。もう次の世界に行かなければなりません。
寿命で死を迎える日だという事を知らせる天使のメッセージはいくつかあります。
鐘がなる事、夜、妖精たちが歌を歌いに来る事、また闇の音楽‥です。
いろいろなメッセージで、葵ちゃんに寿命の日を知らせましたが、葵ちゃんは強く断りました。寿命を迎える日が来たという事は、本人にとっても、生きる事が難しいという意味です。葵ちゃんは生きる事が難しくても、明菜ちゃんともう一度、一緒に暮らしたかったのです。

しかし、ハジアの虜になった明菜ちゃんは帰ってきません。

51才の時、葵ちゃんはついに死ぬ事になってしまいました。
天照大御神様が迎えに来たのです。
これは、神様の秘密なのですが、51才まで一度も結婚しなかった女性は、葵ちゃんだけでした。
葵ちゃんは一筋の涙をこぼしました。それは、今まで、自分のお世話をしてくれた85才のお母さんへの感謝の気持ちと、明菜ちゃんと一緒に暮らせなかった事への切なさです。
でも、天照大御神様は優しい方です。明菜ちゃんの事も想っていました。

葵ちゃんは気づくと、大きなベッドで寝ていました。
先に亡くなったお父さんが来て、「もう少し寝ていなさい。」と葵ちゃんに言いました。
葵ちゃんは安心して、眠れました。

本当はまだ寝ていたいのですが、起こされる日が来ます。葵ちゃんは別の世界に行かなければなりません。それには、三途の川を渡ることになります。
しかし、葵ちゃんは、お母さんよりも先に亡くなったので、賽の河原で石を積まなければなりません。葵ちゃんが石を積んでいると、奪衣婆さんが来て言いました。
「葵はそれくらいでいい。」
「え‥。」
葵ちゃんはびっくりして、奪衣婆さんを見ました。奪衣婆さんと懸衣翁様は、とても恐ろしいと聞いていたからです。

懸衣翁様は言いました。
「何をぼんやり見つめている?何か心残りがあるのかい?」
「ええと‥。」
葵ちゃんは口を閉ざしました。
奪衣婆さんが言いました。
「明菜の事かい?お前のせいじゃないさ。あの子は、ハジアに染まったんだ。ハジアは良い子の事も、悪く変えてしまうんだよ。」
懸衣翁様も言いました。
「ハジアの謎はたくさんある。なんせ、人がいっぱいいるんじゃ。一番は、ハジアで暮らせば、大切な人の命を失う危険がある事だ。でも、ハジアでは、大切な人が誰なのかも忘れてしまうけどな。」

葵ちゃんは、口を開きました。
「あの、明菜ちゃんを幸せにしてあげてください!」
「もちろんさ。俺たちの方からも、神様に頼んでおくよ。」
「ありがとうございます。。」

「ちょうど、葵がお前を迎えに来たよ。」
奪衣婆さんが言いました。

『葵。』
「誰?」
『元気だったころの葵よ。』
霊はそう言い、葵の体に入りました。
葵はようやく、自由に動ける体に戻ったのです。

「葵、元気で。」
「もう二度と、ここではお前には会わないからね。」

「ありがとう、お爺さん、お婆さん。」
葵は感謝し、次の世界へと渡り始めました。

天照大御神様は、明菜に光を落としました。
明菜は、ようやくハジアから出る事を決めたのです。
必ず幸せに生きられます。ハジアにいなくても。

有名人もたくさん住んでいるハジアという大都市。
みんな、大切な人を奪われているのです。
もしくは、大切な人が、ハジア以外の場所に住んでいるのです。

その事にハジアの人は気づきません。
謎が一つ一つ解けるたびに、秘密はどんどん崩れるのです。

神様は『辛い時でも笑う事』を一番に教えてくれます。
どんな時も笑う事ができれば、どんなに秘密が崩れても、平気でいられるでしょう。

葵ちゃんの物語

葵ちゃんの物語

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted