夢をみているあいだにぼくらの世界は

あおい はる

 慈しみは、カスタードクリームの色に似ているね。

 せんぱいのからだが、サクサクのウエハースになったときは、かなしいくらい寒い日でしたが、ぼくは、白い息を吐きながらも、かなしみをおしころしていました。ひだりうでの断面のことを、いまも、思い出すだけで、胸のあたりが、燃えているみたいに熱くなります。夕暮れのいちばん星には、きみがいました。ウエハースのせんぱいは、まよなかのサービスエリアでコーヒーをのみながら、ときどき、じぶんのからだをけずりました。みぎての、ゆびさきから。こわれてしまった街は、いつか、再生される約束が神さまとかわされているそうですが、その、いつか、を約束してから、すでに百年が経っているそうです。神さまはいそがしいのよと、母はあきらめたように言い放ちます。誰しもが、さめない夢のなかにいて、せんぱいのからだにかみついたときの、サクッ、という食感に、すこしだけ気が狂いそうになります。やさしい絶望が、ゆったりと、おだやかな波となり、ぼくたちをのみこみます。
 十二月。

夢をみているあいだにぼくらの世界は

夢をみているあいだにぼくらの世界は

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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