ぼくたちの夜明け
ろうにんぎょうみたいな、にんげんたちと、やさしさをわけあたえることでしか生命を維持できない、きみ。星をたべる、わに。海はくるって、いつも、リアルに、耳もとで感じる、だれかの心音。せんせいがみた、この世でいちばんみにくい争いは、だいたい、インターネットのなかで起きているって。真夜中の高速道路ですれちがった、かなしみをこぼしあるく、バケモノたちの、こと、ぼくはけっこう、好きだった。
ねえ、ツナメルトが、いまこの瞬間、世界一おいしいと思った日、きみがわけあたえてくれた、やさしさを、ぼくはすこしだけ、失ってしまったよ。
信号機の赤い色だけが、網膜に残っている、いつまでも、忘れたい思い出たちだけが、あたまのなかでくっきりと、浮き彫りになっているみたいに。
体育館では、ときどき、かなしみをこぼしすぎて、疲れ果てたのか、バケモノたちが、ちいさく丸まっていて、せんせいが、ひそかに、ゴミ袋、と呼んでいる。黒いから、真っ黒いから、でも、いま、ゴミ袋って、ほとんどが、真っ黒じゃない、と思いながら、ぼくは、せんせいのそういうところ、好きじゃないよ、なんて考える。そういうところを除けば、ぼくは、せんせいのことが、とても好きで、疲れ果てたバケモノたちが、かわいそうだから、休ませてあげたくて、体育館のかぎを、しめる。やさしさを、他人にわけあたえすぎて、次第にか細くなっている、きみには、きみが大好きな、ロールケーキを一本、わたす。きみがくれた、やさしさを、すこしだけ失ってしまって、ごめん、と、こころのなかであやまりながら、わたす。
星をたべる、わにの、からだのところどころが、発光し、やがて、光はきえる。
夜がおわり、朝がくるのだ。
ぼくたちの夜明け