絵売り娘

渡逢 遥

東京へ行った時

人通りの激しいトンネルの脇で

横になっている人の姿を見た

私はゆっくり歩いて

足場に置かれた絵の数々をじっと

いや、じいっと見つめた

一目見て、なんの絵かわからなかったのだが

なんの絵かなんて別にどうだっていいと思った

描きたいものを描けているかはさておき

描きたいものを描きたいという意志、というのか

それがひしひしと伝わったのだ

その時私は歩くのをやめ

こんな美術館があったらな、と嗄れ声を漏らし

転がっていた彼女のベレー帽に

入館料を入れ

退館した

絵売り娘

絵売り娘

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-12-01

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