三題噺「養護施設」「月光」「ペンダント」
月の綺麗な晩、私は児童養護施設の一室に立っていた。
一つだけある窓の下には月の光が降り注いでいる。
そこに少年は座っていた。
「誰?」
「君はここの子かい?」
「そうだよ。」
「一人なの?」
「うん、お父さんとお母さん取られたの。」
「誰が取ったか覚えてる?」
「ううん、でもお母さんのペンダント盗った。」
「……お母さんはどうしたの?」
「お母さんは追い出された。」
「…お父さんはどうしたの?」
「お父さんは僕を置いてったの。」
「憎いかい?」
「うん、とっても。」
「そして今も。」
最後の言葉は私と少年の口から発せられていた。
「……1、2、3。」
パチンと音が鳴った。
私は目を開ける。
「……目が覚めましたか?」
「……はい。」
「過去のあなたに会って何か思い出せましたか?」
「…はい。」
「あなたが誰か思い出せましたか?」
「はい。」
私は目の前の老婆を殴打した。
老婆の首で母のペンダントが揺れていた。
三題噺「養護施設」「月光」「ペンダント」